『7月7日』-2
2人が別れて5年になる。
それは2人が夫婦として生活していた年月と同じになった。
――5年間――
それはとても幸せで、とても辛い5年間…
大きな会社の社長の息子だったカレと、私が出会ったのは大学だった。
入学式。
満開の桜が舞い散る、映画のワンシーンのような光景…
すれ違っただけ。
ただそれだけで、私達は恋におちた。
「結婚したい」
そうカレがカレの両親に告げた時、当たり前のように反対された。
『お前には、もう嫁は決めてある。貿易会社の社長令嬢だ』
よくある話。
でも…
でもカレは、必死に両親を説得してくれた。
出会ってから6年。
満開の桜が舞い散る中、私達はみんなに祝福されて結婚することが出来た。
その日の、風の匂いも、空の色も覚えてる。
幸せなあの日を――
私はシャワーを止め、バスタオルで髪を拭く。
あの頃から伸ばし続けてる髪。
カレが好きだと言った、この長い髪。
5年間で腰に届くほどになった。
それをゆるくまとめ、バスローブを羽織って、部屋へと戻った。
ふかふかの絨毯の上を裸足で歩く。
カレを見ると、ソファに座って、テレビを見ながらシャンパンを飲んでいる。
ボトルの中身は半分ほどになっていた。
「ん」
私に気付くと、カレはグラスを私に渡し、ネクタイを外しながらバスルームへと入って行った。
琥珀色のシャンパンを一口飲むと、少しの炭酸が心地好く喉を通っていく。
別れるきっかけとなったのは、子供だった。
私達には子供ができなかった。
病院に行って検査しても、2人共悪いトコロはない。
医師にも『時期が来ればできますよ。焦らないで』と言われた。