しにがみハート#final-1
翌日。
俺は、学校を休んで昨日の公園にいた。
もし、絢芽が学校に殺しにきたとしたら、もし、俺がそこで死んだとしたら。
それこそ大問題だ。
周りが俺を死んだと認識してしまったら、俺が生き返ったら矛盾だらけになってしまう。
なるべく誰にも見られず、気付かれず、殺される。
それが今、成し遂げなければならないこと。
「…綾瀬さん、探しましたよ」
姫雪が、軽く息を切らして近付いてくる。
「学校はどうした? 姫雪ちゃん」
「…へ? いつ殺されるか解らないのに、私が孝紀さんから離れてどうするんですか…。生き返らなくて良いんですか」
「…そういえば」
すっかりそんな事を忘れていた。
「落ち着いて下さい。死ぬのに失敗したら元も子もないですよ? 絢芽さんの上に自分まで失うんですから」
「だよなー…」
正直、
頭が混乱して今でも状況が把握出来ていない。
解らないことはたくさんある。
なんで絢芽はいきなり消えた?
死神の仕事ってなんだ?
なんで俺が殺されなきゃならない?
そもそも、
死神って何?
こんな非現実的なこと突き付けられて理解しろみたいなこと言われたって無理がある。
でも今は、現実に殺されなきゃいけなくなったし、目の前に天使とやらもいる。
だから、今は成るままになるしかない。
「綾瀬さん、心の準備は出来てるんでしょうか」
「……まぁ、それなりに」
「来ましたよ。殺されなきゃいけない時が…私は隠れてます」
目の前に現れたのは、絢芽と数人の守人。
絢芽はいつも通りの笑顔で、そこに佇んでいた。
「お久しぶりです! 早速浮気ですか孝紀さん!?」
「……おかえり」
「……明るく迎えてくださいよぉ」
少し残念そうに、絢芽は言う。
正直、今から殺されそうになっているのに、明るく迎えられるわけがない。
「早速ですが―、あなたを、殺しに来ました。……すいません、孝紀さん。私、死神なので!」
両手を上げて、さっぱりとした口調で絢芽は言う。
「…あぁ、わかってる」
両手を広げる。
死ぬ覚悟は出来ている。
ただ、ちょっと怖いだけだ。
絢芽は、今までにないような悲しい顔をして、涙を零した。
きっと、あいつなりにバレないよう演技しているんだろう。
「さよならです…孝紀さん……。そこを動かないで下さいよ」
絢芽は鎌を振りかざして飛んでくる。
鎌の先が狙うは、ギリギリ致命傷を逸れる場所。
―ということは。
俺がちょっと体をずらせば、死ぬようなダメージを食らうはず。
そう思った俺は、体を数センチずらした。