しにがみハート#final-2
ザシュッ…
「孝紀さん!?」
「ああああああああっっ…!!!」
「なんでっ!? なんで動いたんですか!?」
意識が朦朧としていく。
痛みが薄れ、目の前が暗くなる。
ただ見えるのは、泣き叫ぶ絢芽の姿。
「…絢芽…大丈夫だから」
「どこが!? 死んで当然の喰らい方ですよ!!」
「…………」
そして俺は、命を失った。
「……死んだ…。ホントに……」
「綾瀬孝紀の殺害、確認完了。死神絢芽を、死神の義務から開放します。では、私達はこれで」
死体を確認した守人が、次々と消えていく。
場に残されたのは、姫雪と絢芽と死体のみ。
「……絢芽さん、落ち着いて下さい」
「…あなたですか。余計な知恵を仕込んだのは」
「……」
姫雪は、腕を組んで考えた。
「……はい。そうですけど」
「なッ―…!!」
「私が死ぬように言いました。それが、どうかしましたか?」
殺気を放ち、鎌を構える絢芽に、姫雪はたじろぎもせず言い放つ。
「殺してやる…」
「良いんですか? 孝紀さんが生き返らなくなっても」
「…え……?」
カラン、と鎌が足元へ落ちる。
「あんなに見張りがいるのに殺したフリで逃げられるとでも思ったんですか? 頭を使いましょうよ」
「じ…じゃあ…」
「一回死ねば文句はないでしょう。孝紀さんは災難ですけど。……まぁ、後は任せて下さい」
ふぅ、と一息をつくと姫雪は絢芽を見据えた。
「ただ、あの芝居は感心しませんね。もうちょっと悲しむ演技くらいしないと、不自然ですよ」
「…う、す、すいません…って、早く、早く孝紀さんを生き返らせないと!!」
「解ってます。…これで借りは返しました」
「……借り?」
「いいえ。こっちの話です」
姫雪は一人微笑むと、ゆっくりと死体の元へ歩いていった。
「只今、天使姫雪の名を捨てて、綾瀬孝紀の命を呼び戻す」
姫雪が手をかざすと、まばゆい白い光につつまれる。
白い光はは天を突き抜け、辺り一帯に煌めいた。
「…やりました」
「…良いんですか? 天使を捨てるって聞こえましたけど……」
「良いんです。天使なんて幻想的な名前、私には必要ありません。…それに、なんか気に食わない名前でしたし」
姫雪は、静かに笑った。