僕らの日々は。〜ある父の日に〜-1
ある日曜日の朝。
篠宮 一葉(小4)は家でゴロゴロしていました。
その横で一葉父もゴロゴロしていました。
ついでに弟の陸斗君(小2)もその横でゴロゴロしていました。
「……あなたたち、ホントに親子よねぇ……」
一葉母が呆れて言いました。
「ほら一葉、陸斗。天気いいんだから外で遊んで来なさい!」
「やだー」
「やだー」
「もうちょっと『日曜日の父さんごっこ』するー」
「するのー」
一葉母は溜息をついて言いました。
「まったく。そんな遊びばっかりしてるとダメ人間になっちゃうわよ?」
「それはもっとやだー」
「もっとやだー」
「ちょっと待て母さん。それって暗に俺がダメ人間って事か…?」
一葉父が何か言っていましたが、一葉母は華麗にスルーしました。
「外で遊んでくるー」
「くるー」
「いってらっしゃい。車には気をつけなさいよー」
二人は外に飛び出して行きました。
「……ダメ人間って……」
「ほら、あなたもいじけてるんじゃないの!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
外に出ると、近所の春風君(小4)に会いました。
「あ、一葉ちゃん、陸斗君、おはよう」
「おはよ。……あれ?春風ー。何持ってるのー?」
「持ってるのー?」
春風は手に小さな袋をぶら下げていました。
「コレ?ほら、今日は父の日でしょ?だからプレゼント用のネクタイ買ってきたんだ」
そう言って春風君は袋の中から、一体どこで見つけて来たのか中央に大きく
『喧嘩上等』
……とプリントされたネクタイを取り出しました。
貰ったときの春風父の反応がとても楽しみです。
「………父の日?」
ちなみに一葉は存在自体をすっかり忘れていました。
「一葉ちゃんもお父さんにいつものお礼に何かあげるといいよ」
それじゃあ、と言って春風君は歩いて行きました。
「母さんっ!」
「あら何?もう帰って来たの?ずいぶん早いわね」
「今日はね、父の日なんだって!」
「へ?……あらホント。すっかり忘れてた。」
可哀相な男、一葉父。