結界対者 第一章-20
「さっきの分?」
「まあ、助かったけどね! でも、勘違いしないでよね! あのまま、あなたが助けてくれなくても、時間を戻して、あの忌者と、もう一度戦う事だって出来たんだからっ!」
こころなしか頬を紅く染めながら、更に言い放つ間宮に、思わず俺は声をあげて笑いそうになる。
そして、ありがたく頂く事にしたコーヒーを、軽く口に含みながら、
なるほどね、ありがとうって事か……
と、なんとなく理解する。
間宮はといえば、飲みかけのコーヒーの缶に
「何よっ、この新製品! 香り高いとか宣ってる癖に、香料の臭いしかしないじゃないっ!」
などと、的を得ているんだか、いないんだか解らない文句を浴びせている。
そんな二人の目の前で、夕日は街を染めながら静かに落ちる。
その染まる全ての中には、先程の旋風桜の公園も在って、それを見付けた瞬間に俺は、何とも言えない感慨にも似た感情に包まれた。
おそらくそれは、間宮も同じ……
俺が、間宮が、守った場所……
戦いの後に間宮が此処を訪れる理由がなんとなく解り始めた頃にはすっかり日は沈み、その余韻だけが紫色に街を染めあげていた。
今日が終わる…… 恐ろしく長かった今日が……
しかしそれは、同時に始まりであるという事を、俺はなんとなく理解しはじめていた。
第二章へ続く