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結界対者
【アクション その他小説】

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結界対者 第一章-11

「お袋と、さっきのアレと、何の関係があるんだ?」

 俺の記憶の中のお袋は、いつも病室のベットの上で、週に一度会えて……

「本当に何も知らない様ね。まあ、考えられなくもないわ。栞さんがアナタに全てを伝えようとしたところで、
病室のベットの上じゃ、いつだって周りに他に入院してる人とか誰かしらいるだろうし、それに……」

 少しだけ彼女の歩幅がせばまる。

「そうこうしてるうちに、亡くなられてしまった訳だし」

 生暖かい風が街路樹を揺らし、午後の気だるい空気が静かに揺れる。

「……俺の母親の事、知っているのか?」
「知ってるも何も……、ずっと一緒だったわよ」
「ずっと?」
「ある意味ね…… まあ、いいわ。私が全部教えてあげる。知ってて貰わないと困る事でもあるし」

 彼女は一旦足を停めると向き直り、少し顔をしかめて「どう説明しようかなぁ」と呟いた後、思い付いた様に喋り始めた。

「あのね、昔、ここの神埼の辺りに、凄いお坊さんが居たんだって。あ、その昔が何時代なのかとかはパス! 私、歴史とか苦手だから」
「別に構わない」
「うん。それでね、そのお坊さんは、時間や水や火や風を自由に操る事が出来てね、色んなピンチから、この辺りに住む人を何度も守ったらしいのよ」
「…………」
「……ついて来てる?」
「……ああ、続けてくれ」
「でも、そのお坊さんも、やがて年をとって、自分が死んだあとに自分の中にある力が、悪いヤツに使われたりしないか心配する様になって……」
「それで?」
「この街にある4つの場所に、それぞれの自分の力を封じて結界を作り、自分が信頼出来る四人の人間に、それぞれの力を授けて、それぞれがその結界を護る様に頼んだらしいのね?」
「4つ?」
「そう。焔の大石(ほのおのたいしゃく)、霞清水(かすみしみず)、刻の鐘(ときのかね)…… そして旋風桜(つむじざくら)」
「刻の鐘……」
「そう。私の家、つまり間宮家は代々刻の鐘を護る者「対者(ついじゃ)」として、その力と共に使命を受け継いできた。
あ、さっきのアレはね、私の力を使って時間を15分程戻したのよ。うふふっ」

 ……うふふっ、じゃねーよ。
 大体、いきなりそんな事を言われて、信じられる奴が居るか!
 でも確かに、さっきは間違いなく時間が戻って……

「ちょっと、聞いてる?」
「あ、ああ……」
「アナタの家は代々、旋風桜の結界の対者だったの。アナタの母親、柊シオリも然りね。
 栞さんは、ずっと病室に居たけど、旋風桜の対者としては最強だった……
 でも亡くなってしまって……」

 そこまで喋って、彼女は黙った。
 かと思えば、思い出した様に

「ねえ、アナタは何で、自分がこの街に来たと思う?」
「何でって……」

 言われてもピンと来ない。
 ただなんとなく、母親が生きていた場所で暮らしてみたくなったから……


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