恋に恋するお年頃!?A-3
そんなある日の午後。
恵は、もうお決まりになった進路室の接客用の机に向かい、数学検定の問題を黙々と解いていた。
「どう?はかどってる?」
佐藤が、麦茶を入れたグラスを手に聞いてくる。
「あ〜っ!ズルい。私も飲みたい!」
恵の非難の声を浴びると、佐藤はもう一つのグラスを持ってきた。
中には、もちろん冷えた麦茶が入ってる。
「ありがと。…いただきます。」
素直に礼を言い、恵は渇いた喉を潤す。
「…で?どうなんだよ?勉強の方は。」
恵のノートを覗き込みながら、佐藤が尚も尋ねてくる。
「計算問題は大丈夫なんだけどね……。図形とか応用になると、解説読んでも全くわかんない。」
まだ授業で習っていない範囲をやってるんだから、わからないのは当然のような気もするが、恵はどこか面白くない気分になる。
「先生は、何級まで持ってるの?」
「ん?俺?準1級。……って言っても、高3程度だけどな。」
佐藤は、恵のノートを見直しながら、質問に答える。
「いつ取ったの?」
そんな佐藤の横顔に、恵は質問を続けていく。
「え〜っと……。大学2年の時。準2級は高3の時だったかな?」
佐藤はノートから目を話さない。
もちろん、横顔を見つめている恵の視線にも気付かない。
"さすが鈍感"と言うべきか……。
「それって何年前?」
さり気ない風を装い質問を続ける。
佐藤の年齢は、20代後半〜30代前半だろうと推測しているが、実際の年齢はまだ恵も知らない。
検定を取ったのが何年前かがわかれば、そこから計算し今の年齢を割り出すことも可能だ。
直接は聞きづらいが、これなら自然だし。
「……13年前かな?」
少し考えながら、佐藤が答える。
13年前が高校3年生だとすると、佐藤は今年31歳になるということになる。
素早く、2人の年齢差を計算する。
(15歳差か……。)
心で呟く。
15歳の年の差。
佐藤にとって、自分は恋愛対象になるのかと、不安になる恵だった。