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夢の少女と召喚魔術
【ファンタジー 恋愛小説】

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夢の少女と召喚魔術-1

………夢を見た。

夢にでてきた少女は、紅い眼をし、黒衣を纏い、白く長い髪を靡かせ、雪の中を流れるように歩いて行く。
追いつこうとしても、近付くだけで追いつかない。
息を乱し、彼女の方を見ると、彼女は俺に微笑み、雪の中に消えて行った…。

あの夢の日以来、どうしてか彼女が気になってしょうがなかった。
とある学校の召喚魔術の試験の日に…事件は起きた。

召喚試験は何を呼び出してもいいという条件の元行われる。人、悪魔、物質、現実に存在しない存在など。

もうあらかた予想はついていると思うけど…俺はあろうことか、夢に出て来た彼女を呼び出してしまったのだ。

まぁ、その間の経緯はまた別の機会に。

そういうわけで、最近は俺1人で静かだった家が朝からなかなか騒がしくなっているわけで…

「和也、朝ご飯だよ♪」

彼女は本来夢の精霊で、人間が一緒に生活できるような生命体ではないのだけれど…まぁそこは敢えて気にしないでいこう。

顔を洗い制服に着替え、食卓に向かう。
「おはよう、アルマ。今朝の朝ご飯は随分手が凝ってるね〜。大変じゃなかった?」
彼女はえへへ〜っと満面の笑みを浮かべ、甘えるような声で話し出す。
「気にしないで♪和也が好きだから色々してあげるんだよ?」
俺は少し照れながらありがとうと言って、2人で朝食を食べ始める。
朝食を終えるとアルマも準備をして、一緒に登校する。

学校にしてみれば驚きだったのだろう。精霊召喚は高等魔術師でも難しいと言われている。それをこんな下級魔術院でやられるとは、自分も学校も思いも寄らず、学長は勢いで「歳も一緒だから通学させちゃえ!」 などと言って、アルマの通学を許可してくれた。

しばらく歩くと住宅街も終わりに近付いてくる。
「いってきま〜す。」
と聞き慣れた声が聞こえる。…幼馴染みの渚だ…。また厄介な事になる…。彼女は一応体育会系なので、俺はいつも心身共に振り回されているのだけど…。

「和也〜!朝からアルマとイチャつくんじゃな〜い!!」大きな声で叫びながら走り寄ってきて、俺の腕に抱き付く。
「あなたに和也は渡さないんだから!」
ビシッと指をアルマに向け、黒い瞳をキラリと輝かせ、朝から戦線布告…。
「…渚…頼むから朝からこういうのは勘弁してくれ…。」渚の胸が俺の腕に当たっている…というマンガのような展開…。
「ダーメ!和也が私と一緒にいるって言ってくれるまで、追いかけ続けるんだから。」アルマも白い髪を靡かせながら、受けて立つと言わんばかりの顔に変わり、それと同時にアルマも渚と反対側の俺の腕に抱き付く。
「いいでしょう渚。まぁ私は和也と一緒に暮らしているので私の圧勝でしょうけどね。一応私の恋敵という事にしておいてあげます。」
ニヤッと笑い、2人の間に火花が…比喩ではなく、2人とも魔力を持ってるのでほんとに散っている。
見ていて面白い光景ではあるんだけど…。
「あ〜もうっ!頼むから仲良くしてくれぇ!!」
「じゃあ和也は私達のどっちを選ぶの!!」
アルマと渚の声がハモる。

夢に出て来て具現化し、俺を好きと言ってくれる少女と、ずっと一緒にいた幼馴染みを比べるのは無理な話なので…取りあえずここは………走って逃げる事にした!

「あっ!こらぁ〜!待て〜!!」
2人が同時に俺を追いかけてくる。
全速力で道を駆け抜け学校まで走る。

「捕まってたまるかぁ〜!」

こうして俺の新たな日常は始まっていった。




その後…2人を決めかねた挙句、一夫多妻制になった国で3人で結婚式を挙げ、幸せに暮らしたというのは、また別のお話………


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