True is nowhere（←→Now here）-1
登場人物
アキラ １６才。高校一年生。
カスミ １５才。高校一年生。
（制服姿の二人が夕方の河の土手を歩いてる）
カスミ「ありゃ」
アキラ「どうした？」
カスミ「（指差しながら）コンクリートになってる」
アキラ「あれ、昔からじゃなかったっけ？」
カスミ「違うよ、昔よく遊んだよ」
アキラ「……ああ、そうだ。確か割れたガラスビンで怪我して」
カスミ「（かぶせて）やめてごめんなさい思い出させないでいたたたた」
アキラ「うん。ごめん」
（沈黙が落ちる）
カスミ「変わったね」
アキラ「そう？」
カスミ「昔はそんなんじゃなかった」
アキラ「そう」
（また沈黙）
カスミ「仕方ないよね。同じじゃいられないもん」
アキラ「うん。ごめん」
カスミ「何で謝るの？」
アキラ「何で笑いながら聞くの？」
カスミ「質問に質問で返さない」
アキラ「ごめん」
カスミ「よろしい」
（また沈黙）
カスミ「さあ、今から問題を出します」
アキラ「いきなり何？」
カスミ「何が嘘かを当ててください」
アキラ「…………」
カスミ「私はあなたを殺したいです」
アキラ「…………」
カスミ「私は世界よ滅んでしまえと考えています」
アキラ「…………」
カスミ「（お腹をさすりながら）……私は子供を堕ろしたいと思っています」
アキラ「…………」
カスミ「さて、何が嘘でしょう？」
アキラ「……一番最初。『何が嘘かを当ててください』」
カスミ「どうして？」
アキラ「全部本当だから」
カスミ「…ちぇ。惜しかったね。ちょっと違う。『全部本当』なんじゃない。『全部嘘』だから」
アキラ「そっか」
カスミ「うん。私はそこまで絶望してないよ。あなたにも、この世の中にも、これからの将来も」
アキラ「そっか。でもそれは嘘だよね」
カスミ「……ごめん」
アキラ「謝んなくていいよ。嘘つくのは悪いことじゃないから」
カスミ「そうなの？」
アキラ「そうだよ」
カスミ「………私ね、産もうと思う」
アキラ「そっか」
カスミ「そう」
アキラ「おめでとう」
カスミ「………ありがとう」
（カスミが走っていく。アキラはその後ろ姿を見つめてる）
fin