ICHIZU…C-2
そんな佳代を見据えた榊は、ニヤリッと笑って、
「おお!3回戦位までは、途中から出すぞ!準備しとけよ」
「ア……ア…」
佳代はうつ向いて全身を震わせる。と、次の瞬間!
「やったたあぁぁーーっ!!」
その場でジャンプを繰り返す佳代。辺りの事など忘れたように、自分の感情を爆発させたのだった。
ー夜ー
佳代の母、加奈は夫の健司と共に忙しく夕食の準備にをしていた。
「あなた。ソッチのをお願い」
「分かった」
出来上がった料理をテーブルに運ぶ健司。共働きのため、彼は早く帰った時には極力家事を手伝っている。
そんな時、玄関ドアーが勢いよく開いた。“ただいま!”と佳代が帰ってきた。急いでテーブルの前に来る。健司と加奈から“おかえり”と声がかかる。佳代はこれ以上無いというような嬉しそうな声で、
「父さん、母さん。聞いて!私ね…」
そこまで言って佳代は口をつぐんだ。
(そうだ!どうせなら皆んな揃った時に発表しよう)
キッチンの方から加奈が“なあに〜?”と声をかけてきたが、
「ゴハンの時に話すよ!先に着替えてくる」
佳代はそう言うと、荷物を持って自室へと駆けて行く。健司はその様をポカンとした表情で見送った。
荷物から制服を取り出しハンガーに通すと“シワ取りスプレー”をかける。バッグからユニフォームやタオルを出す。
いつもは“面倒くさい”と思ってやる事も今夜はテキパキとこなす佳代。おまけに目元は細まり、口元はニヤニヤと笑っている。タンスから着替えと汚れモノを持つと、階下の風呂場へと向かう。
脱衣所で着ているモノを脱ぐと、先ほどの汚れモノと一緒に洗濯機に放り込み、洗濯機をスタートさせると風呂に入った。
身体を洗い湯船につかる。
(イタタッ……くう〜っ、しみる)
佳代の胸元やオシリは赤くなっていて、左腕には内出血の跡が見える。練習中のスライディングやダイビング・キャッチ。バッティング練習でボールをぶつけられた時に出来た跡だった。
佳代は湯船につかっている間、筋肉マッサージやリンパ・マッサージをこなす。
そして風呂からあがると廊下でストレッチ。これらはジュニア時代に藤野から教えてもらった疲労回復法で、今では佳代の日課になっていた。
佳代の日課が終わる頃、洗濯機から洗濯終了のアラームが聴こえてくる。洗濯物を乾燥機に入れる。就寝前には明日の準備が整う。