僕らの日々は。〜僕と彼女と食パンと〜-1
――ある日曜日の午後。
「………む〜ー…」
篠宮 一葉は、唸っていた。
「どうしたのさ、一葉?」
「勉強めんどくさい…」
「……我慢しなよ」
今日は中間テスト前最後の休日なので、一葉と春風は篠宮家にて勉強会を開いていた。
…いたのだが。
「大体なーんでこんなに昔の人の名前を覚えなきゃいけないワケ?」
「勉強に意味を求めたら負けだよ。実際学校を出たら全く使わない事の方が多いんだし」
「分かってるんだけどねぇ……」
一葉はもうすっかり勉強拒否モードだったりする。
「まだ一時間しかやってないじゃないか。せめて後一時間はやろうよ」
「私、暗記系の科目ってキライなのよねぇ…」
「中学のときは常に総合十番以内に入ってたのによく言うよ…」
「キライと苦手は別物よ」
一葉は頭がいい。
普段大して勉強してる訳でも無いと思うのだが、終わってみると結構差が開いていたりする。本人いわく、『あんたの要領が悪いだけ』…らしい。
「そういえばさ、アレがあればいいと思わない?」
「何がさ?」
「暗記と言えばアレでしょ」
「………いやゴメン。全然分からない」
一体何の話………
「暗記パンよ」
…………………。
「なんてまたマイナーな秘密道具を……」
「でも暗記パンがあれば丸暗記よ?とっても楽じゃない」
「そうかなぁ………」
「何よ春風。何か問題でもあるの?」
「問題というか…」
「何よ?はっきり言いなさい!」
「ほら、アレって生の食パンに文字を写して食べるじゃないか」
「それがどうかしたの?」
「たかだか食パン一枚分のノートを暗記するために、焼いてもないただの食パンを食べるのって結構キツくないか?」
しばし沈黙。
「……まぁ確かにね」
「しかも黒鉛とかインクとかが写ったパンだろ?何か食べるの嫌だし」
「…う〜ん、健康にはあんまり良くなさそうねぇ」
「だろ?つまり普通に勉強するのが一番さ。というわけで勉強を続け…」
「あ、食パンといえばもう一つ気になってたんだけど」
まだあるのか。
「……何さ?」
「アイツよ。食パ〇マン。」
「……食パ〇マン?」
「そう。ほら、アンパ〇マンがよくお腹が減ったコに『僕の顔をお食べ』…っていうじゃない?」
「まぁ……言うね、確かに」
というか彼がアンパンである理由なんてそれしか無いんじゃないだろうか。
むしろバイ菌男と闘う時には弱点になることすらあるし。