年上の事情。‐2-3
「…昨日誘ったんです。ご飯でもおごろうと思って。で、告ったんです」
「で、振られたってわけだ」
香ちゃんが言う。
おいおい‥
そんなストレートに。
祝さんはうなずいた。
なんとなくは想像はついたが、やっぱりそうなのかと、それで元気がないのかと、軽く呆れてしまう。
「はぁ‥あのねぇ」
あたしが話しだす前に香ちゃんがため息混じりに切り出した。
「もう学生じゃないんだから。社会人なんだから。
落ち込んでても仕事しなきゃいけないの。
気分がのらなくてもしなきゃいけないの。
先輩なんてね、昔‥」
おっ。
何を言いだす?!
「え。五十嵐さん何かあったんですか?」
さっきまで泣きそうな顔してたのに、今は興味津々な目であたしを見てる。
「もぉ!あたしの事はいいから!…とにかく!
新人のアナタでも、一人でも遅れると広告部全体の仕事が遅れるの。
広告部が遅れるとうちの会社全体が遅れるの。
責任を持ちなさい!」
祝さんは「‥はい」と返事をした。
彼女の真剣な表情を確認するとあたしはもう一言付け加えた。
「…ガンガン働いて、女磨いて、鳴海くんを見返しな!!」
『はいっ!!』
なぜか香ちゃんも一緒になって返事をしていた。
ぶっちゃけ言うと、祝さんの気持ちもすごく分かる。自分もそうだったから。
片山と、別れたときそうだったから。
でもあたしはその当時、すでに後輩がいた。落ち込んでいる暇なんてなかった。
ただ少しでも大人に見せたかった。弱いところなんて見せたくなかった。
でも、
泣いたり、落ち込んだり、…そっちの方がかわいげがあったのかな。