手紙〜親愛なる貴様へ〜-1
菊の香漂う四十九日…
私は人間を見た
【手紙〜親愛なる貴様へ〜】
冷たいフローリングの床にポタポタと真紅の液が垂れ落ちる…
私は一体何が起きたのか分からなかった
この状況を何と言えばいいのだろう
…………ハッ!!
私は自分の手が握りしめていたものに気づいて驚き、それを落とした
手が震え立ち止まらなかった
「……ひゃっ!!」
視線を壁際にもっていくと、そこには私の知っている男が変わり果てた姿で壁にもたれかかっていた。
私の母の愛人だった。
男の目はまっすぐにこちらを向いていた
まるで、お前がやったんだと言わんばかりに…
「わ…私がやったの!?」
私は錆びた鉄のような血の異臭に気が狂いそうになった。殺したのはホントに私なの!?
だけど……
だけど何故!?
いくら考えても殺人の動機が浮かび上がらない
私はただ誰かを殺したかっただけなの?
私はここから少しでも動いてしまえば全てが壊れてしまいそうな気がして、ここから逃げ出す勇気がなかった。
私は混乱しすぎて何がどうなっているのかすでに分からない状態にあった
誰かがきっと助けに来てくれるとすら思った。だけど、来るとしたらそれは私を必ず責め立てるに違いない。私を不安定にさせるんだ。
その時だった
「ユキ……。アンタ…。」
急に声が聞こえた。母が帰ってきていたいたのだ。母は下唇と手をガタガタ震わせながら、このマイナスの領域へと踏み入れてきた。
「母さん、やっぱり……私がやったの?」
「あ…あっあっ。ユキィィ。ユキィィィィィィ。」
母は男の遺体を確認したあと、涙をボロボロ流しながら私を強く抱きしめた。私は何故母が私を抱きしめたのか分からなかった。母の愛人を殺したのは私なのに…。