溝-3
「あー…そうそう」
何枚かの紙が束になって渡される。
…中には、学校のテストらしき物も。
「それ、今週のプリントだよ」
パラパラと適当に目を通してみた。
こんな行事もあったんだ。 校長先生変わった? ん?有名な熱血先生だ、懐かしいなあ。 へえ…あの先生、妊娠かあ…。 あ、きぃちゃんが写ってる!
色々と学校のことを思い出して、暫くしてからまた泣いた。
…こんな思いをするくらいなら、生まれてこなきゃよかった。
ねえきぃちゃん、わたし、生きることが辛くなってきたよ。蟠りばかり残るよ。どうすればいいのかな?死んだ方がいいのかな?首吊り自殺?リストカット?それとも、醤油を一気飲みして死ねばユニークかな?みんな、笑ってくれるかな?笑って、許してくれるよね?
「顔、洗おっか」
問いには答えず、きぃちゃんはわたしの背中を押して、洗面所へ向かわせた。
ぱしゃぱしゃって、水で濡れたきぃちゃんの手が、わたしの顔中を優しく擦るようにして洗う。
昔、おかあさんがやってくれた時みたいで、きもちいいな。
これで、わたしの汚れ全てを洗い流せたらいいのに。
「はいー終わり。あっと…タオルはどこに?」
そこの中。と、きぃちゃんの足下にある黄色いカゴを指さした。
「……ん、これ……他のタオルは?」
え?中にタオルなかったの?
「あったけど、あんな昔のタオルじゃ、使えないよ」
前に、手首の血を止める時に使っただけだよね。少し血が付いてても大丈夫だよ。いつも使ってるし。
「そういう問題じゃなくて…ああ仕様がない」
そう言って、きぃちゃんは自分の制服の袖の部分で、わたしの顔を拭いてきた。
きぃちゃん、ちょっとだけ汗のニオイがする。
「血のニオイよりかはマシじゃない?」
そうだね。きぃちゃんのニオイだから大好き。
言ってくれるなあ。そう呟いて、きぃちゃんは照れた。
「じゃあ、僕は帰るよ」
…もう帰っちゃうの?
「…うん。また来るから」
………。
流れそうな涙を、必死で堪えた。
上を向いて、きゅっと目を瞑る。
そのままの状態で深呼吸。
…少しは落ち着いた。
涙も出ない。