仮面カタルシス-1
私の名前は、神島 優。
優しいの優。
私の周りにはいつも誰かが傍にいる。
−ちょっと、優ー、聞いてよー
「何、ソレ、ひどい!」
−優ちゃん、今度さ
「うん、わかった」
いつも通り、変わらない自分。
学校が終わり、上履きを取りかえ、外に出た。
「神島さん!」
後ろを振り返ると、そこには知らない男子生徒が立っていた。校章の色からして同学年かな。
「あのさ…ちょっといい?」
今にも泣き出しそうな雰囲気だ、この先何が待っているかぐらいだいたい想像はつく。だから、笑って答えなきゃ。
「うん、何?」
「あのさ…イキナリなんだけど………俺、君のことずっと好きだったんだ!俺と付き合ってください。」
答え、ちゃんとあるんだ。
「ゴメン…私ダメなの。君が、とかじゃなくて、今、そうゆうこと考えられないの……」
本当にゴメン。
「そっかぁ、うん、分かった。なんか悪い」
それだけ言って、去っていった。顔は見ることが出来なかった。
私、ウソばっかり。
夕暮れの赤い道を歩く。
友達に電話をして、これからの時間を潰そうとも考えたけど、なんだか悪い気がして、一人、この道を帰ることにした。
「神島 優」
また呼び止められた。
でも、振り向きはしない。さっきの事がフラッシュバックしそうだ。
「さっきの見せてもらったよ。本当にあるんだな、あーゆー告白」
だんだんと楽しそうな声は私に近づき、そして並んだ。
「ホラ、歩こ」
促されて、足を進める。
声と並んで。
「なんで断ったの?結構カッコ良かったと思うけど」「だって、名前も知らないし…すっごいイキナリだったし」
「ふぅーん、じゃ名前も知ってて、順序とかふんでれば良かったの?」
初めて私は声の方を見る。長めの髪を適当にバラつかせて、遊んでいる雰囲気がある。背は高く見上げるような形になる。
この人の事は知っている。友達からよく話しも聞くし、何より一年前のクラスメートだ。
でも実際に話した事はない、いつも適当に上手くやってる、奔放な感じだったぐらいにしか覚えていない。
「冗談だって、あんま睨むなよ」
「今、私睨んでた?遠野君」
そうだ、遠野 深哉だ。
「どうだろうな、ってか、俺の事わかるんだ」
「元クラスメートじゃん」遠野深哉は声こそ楽しそうにしているも、目は全くと言っていいほど笑ってはいなかった。
「あいつもだけどね。」
「え?」
「神島に告ってたあいつも元クラスメート。そして俺の友達。で、神島優も俺の友達。」
何でこんな事を言うんだろう。
何が言いたいのかわからない。
「あれっ?おかしいなー記憶喪失カモ」
「別に責めてるわけじゃないって。どんな付き合いしたって俺は関係ないし、
たださ、優しいって言葉、言い訳に使うなよな。」