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刃に心
【コメディ 恋愛小説】

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刃に心
《第24話・忍者探偵忍足疾風の事件簿〜お調子者を殺したのは誰か?
次々と明らかになる友の暗い心。
まさか犯人はこの中にいるのか?
果たして疾風は友を疑えるのか?
『湯煙温泉彼方殺人、
尚、今回のタイトルは本編と一切関係ありません事件』》
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「うん。了解」

ピッと携帯の電源ボタンを押した。

「シイタケも大丈夫だってさ」

座っていた回転椅子をくるりと回し、疾風は振り向いた。

「うむ。ならば、これで全員参加だな」

楓は頷くと、手に持った赤ペンでリストアップされた武慶の名前を消した。
楓の言葉通り、A4の紙の上に並んだ名前にはことごとく赤線が引かれていた。

「…まあ、幾人かは不本意だが」

ぽつりと小さく溢して、紙の上の千夜子、刃梛枷、朧の名前を睨み付ける。

「じゃあ、後は車を出してもらえるよう、母さんに頼んで見るか」

《第24話・忍者探偵忍足疾風の事件簿〜お調子者を殺したのは誰か?次々と明らかになる友の暗い心。まさか犯人はこの中にいるのか?果たして疾風は友を疑えるのか?『湯煙温泉彼方殺人、尚、今回のタイトルは本編と一切関係ありません事件』》

◇◆◇◆◇◆◇

「無理よ」

既に三度目となるこの言葉。

「お父さんも仕事だし、お母さんも用事があるのよ」
「頼むよ。どうせ大した用じゃないんだろ?」
「無理。月に一度の鬱憤をぶちまける日本くの一の会の会合は外せないわ」

食卓を挟んで親子の視線が交差する。
ピリピリとした緊迫ムード。
仮許嫁といえども、居候の身分である楓にはとても居心地が悪かった。
疾風の傍らに座り、おろおろと視線を二人に走らせる。
もう秋も深まってきたというのに背筋に汗が流れる始末である。

「…あの、どうしてもダメでしょうか?」

やがて耐えきれなくなった楓が口を開いた。

「旅行は私達だけでなく、皆も楽しみにしているのです」

旅行というのは、つい先週行われた裏のサバゲー大会の優勝賞品である。
その旅行に来週の休日を使って仲間と行くために調整を進めていた。
しかし、移動手段の段階になって支障が生じた。
当てにしていた両親が両方とも無理だと言う。

「楓ちゃん。そうは言ってもね、人には曲げられない部分があるのよ」
「…愚痴り合う昼食会で何を言ってるんだか…」

その言葉に母のしのぶが瞬時に手裏剣を指に挟む。
疾風も殺気を感じて苦無を即座に構えた。

「お、落ち着いてください奥方殿!疾風、お前も口を慎め!」

楓が慌てて仲裁に入った。

「…楓ちゃんに免じて今日のところは許しましょう」

手裏剣を納めながら、しのぶが言った。

「それに車が運転できればいいんでしょ。なら、打ってつけの人がいるじゃない」

楓は『?』を頭に浮かべた。

「そういえばいたな暇人が」

しかし、疾風は何ともいえない複雑な顔だった。


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