刃に心
《第24話・忍者探偵忍足疾風の事件簿〜お調子者を殺したのは誰か?
次々と明らかになる友の暗い心。
まさか犯人はこの中にいるのか?
果たして疾風は友を疑えるのか?
『湯煙温泉彼方殺人、
尚、今回のタイトルは本編と一切関係ありません事件』》-3
◇◆◇◆◇◆◇
電車を降り、駅を出て住宅街へと向かう。
顔の熱も秋風によって冷めてきた頃、目的地のマンションに着いた。
階段で三階まで上がり、301の部屋のインターホンを押した。
ピンポ〜ン。
「………」
しばらく待っても反応は無い。
「やっぱりな」
疾風は溜め息混じりに言うと、再びインターホンに指を添え、連打した。
───ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン…
十数回連打したところで部屋の中からドタドタという足音がけたたましく扉に近づいてきた。
「やかましいわァッ!」
バタンッ、と扉が開いて、中から痩せ型糸目の青年が出てきた。
「何や自分はァ!人が泣きゲーに興じとた時に何の用やァ!あぁ?新聞か!それとも宗教の勧誘かァ!
わざわざご苦労やけどな、わいは新聞は日経とデイリー、宗教はゾロアスター教なんやァ!
よって、自分が入る余地は無しッ!判ったら、さっさと帰らんかい、ボケェ!」
一気に喋り終えると部屋の中に戻ろうとする。
「ちょっと待った、七兄(しちにい)」
咄嗟に足を入れて、扉が閉まるのを防ぐ。
「ん?おぉ、疾風やないか。何、人ん家の玄関に足突っ込んどんねん?何しに来たん?
まあ、ええ。兎も角上がるか?」
疾風は、はぁ…と大きな溜め息を吐いた。
◇◆◇◆◇◆◇
部屋は意外と豪華だった。
一人暮らしだが、テレビは薄型、オーディオセットも高性能な機種、パソコンに至ってはデスクトップとノートがそれぞれ一台ずつ。周辺機器も充実していた。だが、部屋は雑誌やゲームで溢れていた。
「で、何の用や?てか、そっちの綺麗な娘はどちら様?」
「は、初めてまして。小鳥遊楓と言います」
楓は姿勢を正し、深々と頭を下げた。
「ほぅ…この娘が霞のゆーとった許嫁ちゃんかァ♪
わいは神足七之丞。そこの疾風の従兄弟や」
七之丞はにやにやと口許に笑みを浮かべながら言った。
「へぇ、想像以上に綺麗やな。で、疾風とは何処までいったん?」
「ど、何処までと言われましても…」
「何処にもいってません。許嫁って言っても仮なんだから」
なぁ、と疾風は楓の方を見た。
だが、楓はじと〜っとした目で疾風を一瞥すると、頬を膨らましてそっぽを向いた。
「許したてな。こいつの鈍さは病気やねん」
「病気って何だよ。
それより七兄、頼みがあるんだけど」