ICHIZU…B-5
直也の顔はみるみる真っ赤になったのを、周りの部員達は不思議な面持ちで見ていたのだ。
「なんだ…でも、そのおかげで有理ちゃんもイヤな思いしなくなったんだから感謝してよ」
「何言ってんだ!コッチはアレ以来、自分のニオイが気になって、ろくに話もしてねぇんだ!」
直也の言い訳じみた訴えに佳代はため息をつくと、
「そっかぁ、なかなか上手くいかないモンだね」
そして話題を変えた。
「1年半ぶりだね。コーチと会ったの…」
「ああ…相変わらずスゲェな」
「“カヨーッ!”って怒鳴られた時、なんか嬉しくて」
「オレも将来、小学生に野球を教えたいな」
「そだね…」
そうこうしている間に、佳代の自宅近くに2人は着いた。直也は“練習遅れンなよ”と言って帰って行った。
「ありがとう!」
直也を見送った佳代は我家へと方向を返すと、空を見上げた。
ポツポツと星が輝き始めていた。
…【ICHIZU…B 完】…