Boys, be brave!-1
ここは、夕暮れの学校。
三階の角の教室。
僕は窓際の一番後ろの席。
彼女はその前の席。
二人きりのこの空間で、僕たちは机に向かい合って学園新聞の製作をしている。
「あ、三谷くん。それ取って」
「うん?…ああ。はい」
「ありがとう」
製作に励む彼女・中山理奈は、新聞委員会の委員長さん。
そして僕・三谷卓は、同じ新聞委員会の副委員長だったりする。
「ねえ、三谷くん。ここってこっちの写真の方がいいかな?」
「う〜ん…。それよりそっちの写真のがいいと思うけど」
「え?コレ?」
「うん。ここを切り取って、こう貼れば…」
「あ、ぴったり!じゃあ、これにするね」
締め切りに追われながらも、彼女はとても楽しそうに新聞を作る。
僕はそれを手伝いながらも、他に誰もいない二人だけのこの状況と、夕焼けに染まる彼女の笑顔にドキドキしていた。
そう…。
僕は彼女に恋をしている。
始まりは、委員会での役員決め集会の時。
「はぁ〜、たいくつ…」
普段は使われない三階の特別教室で、僕は青い空を窓越しに見上げながら机につっぷしていた。
この時は、欠席が原因で勝手に新聞委員なんかにさせられて、全然やる気なんて無かったのだ。
「ホント退屈だな〜。だいたいさ、新聞なんて作っても誰も読まないんだから、意味ないんだっての」
ともにグチをこぼすのは、同じように欠席して新聞委員となったクラスメイトの和也。
「でも、今さら何言っても無駄だよね。それに、休んじゃった僕たちが悪いんだし」
「そりゃそうだ」
「…はあ〜」
僕と和也の重なったため息をよそに、教員の話は淡々と進んでいった。
青いキャンバスにくっきりと浮かび上がる白い雲が気持ち良い風に流されて、太陽が顔をひょっこりと現しはじめる。
いよいよ、運命の瞬間が訪れる時だ。
教員は、役員を決めるにまず、委員長となる人物を立候補させた。
それに彼女が手を挙げたのだった。
「ハイ!私がやります」
高く透き通るような声に、物好きだな。とか、偉いな。とかの視線が集まる。
僕も例外なく、はじめはその見ず知らずの物好きな女の子に興味の目を向けた。
そして、釘付けとなった。