Boys, be brave!-4
「これなら一緒に見られるでしょ?」
一つの机に椅子を二つ並べる僕たちの距離は、約20センチ。
さっきまでは机と新聞が距離と壁になっていたから少しドキドキする程度だったのに、今はもうそれが無くて…。
心臓が、破裂しそうなほど早くなる。
顔が、いや、身体中が熱い。
でも、体が動かない。
ど、どうしよう。
「どうしたの?三谷くん?」
「えっ!!あ、いや、何でもない。なんともないよ。うん、これなら二人で読めるもんね。じゃ、じゃあ、見直そう」
新聞に目を移してはみたけど、全然まったく少しも内容が入ってこない。
彼女が動くたびに揺れる髪の優しい匂いと、彼女が文字を追うたびに微かに動く淡いピンクの唇が、僕の意識を掴んで離さない。
本当に、とてつもなくやばい。
とりあえずもう一度新聞を見直そうと思って、それに視線を落とした。
そこへ彼女が声を掛けてきた。
「あ、三谷くん!ここ、漢字間違ってるよ」
「えっ?」
「ほら、この漢字」
ぎこちないながらも、僕は彼女が指差す場所に目を向けた。
「…あ、ホントだ」
「ね?」
と言いながら、彼女がこっちを振り向いた。
それに気付かず、僕も彼女へと顔を向けた。
思いがけず、お互いの顔が近くなっていた。
その距離、10センチ。
「…あ」
目と目が合う。
「………」
時間が、静かに止まる。
「………」
段々と、距離が短くなっていく。
そして……。
「あ、ご、ごめん」
途中でハッとして、僕はバッと顔を離して条件反射的に謝った。
すると彼女は顔を逸らして、そのまま黙りこんでしまった。
気まずく重い沈黙が、二人の間に流れた。
それは、ほんの数秒の沈黙だったのだろう。
けれど、僕には永遠とも感じられるほど永くて。
なんとかこの沈黙を破らなければと、頭の中で必死に言葉を探していた。
でも、先に破ったのは彼女の方だった。
「なんだか、…ドキドキしちゃった」
「…え?」
「え?…あ、いや、あれ?何言ってんだろう私。ご、ごめんね三谷くん。気にしないで」
慌てる彼女の頬が紅いのは、夕陽のせいだろうか?
聴こえてくるこのドキドキは、僕の?
それとも…。