恋に恋するお年頃!?-5
「……もう、いいです。先生が鈍感だったってことがわかったんで。鈍感君の言うことは気にしませんから(笑)」
確かに、ここに来るまでは、佐藤に対する不信感でいっぱいだった恵だが、新しい佐藤の姿を知れば知るほど憎めなくなっていた。
「そう言ってもらえて、助かった。悪かったな……ありがとう。」
佐藤が手を伸ばし、握手を求めてきた。
これも、鈍感故の行動か?と思いつつも、恵も握手に答える。
「いいえ。じゃあ、私、教室戻りますね?」
「あぁ、午後の授業もしっかりな!」
急に教師の顔に戻る佐藤。
でも、新たな一面を知ってしまった恵にはたいした効果はないようだ。
「はぁ〜い☆」
恵は、進路室に来たときとは打って変わり、足取りも軽やかに教室に戻っていく。
それからというもの、恵と佐藤の距離は急速に近付いていった。
恵はほぼ毎日、放課後に佐藤に会うため進路室に通うようになっていた。
「せ〜んせっ!」
恵が進路室のドアから覗くと、佐藤は「おぉ。」と笑顔で迎えてくれる。
端から見ていると、付き合い初めのカップルのようだが、恵はまだこの気持ちを言葉で表すことができずにいた。
今までに感じていた気持ちとは、明らかに違う佐藤への想い。
この気持ちを"恋"と呼んでもいいのか…?最近の恵は、この疑問を胸に日々を過ごしていた。
美智子や雅美に相談したくても、相手が先生では、簡単に相談することもできない。
「ふぅ〜……。」
ベッドの上で本を閉じ、恵はため息をつく。
"いつでも、何をしていても、その人のことを考えてしまう"
"気が付くと、ただ1人を目で追っている"
小説には、それを好きという。って書いてある。
だとしたら、恵の佐藤への想いは『好き』ということになる。
(……でも、私には先生を好きになる理由はないし。)
答えの出ない自問自答を繰り返す毎日に疲れた恵は、思い切って美智子と雅美に相談をすることにした。
「あのさ……ある人のことをずっと考えたり、目で追ったりするのは、その人のことが好きってこと?」
楽しいお弁当の時間。
恵からの突然の質問に、美智子も雅美も目を丸くしている。
先に口を開いたのは雅美。
「何〜?メグにも好きな人ができた!?」
「えっ!?違うよ!そんなんじゃなくて……」
恵は慌てて否定するが、
「佐藤でしょ!?」
美智子にズバリと言い当てられてしまった。