恋に恋するお年頃!?-2
ガラッ…。
教室のドアを開けると同時に、素早く智久の様子を観察する。
昨日の今日で智久の顔を見るのは気まずい来もしたが、いつも通り友達と笑い合っている智久を見て、恵はホッと胸を撫で下ろした。
「美智、メグ、おはよっ!」
先に来ていた雅美が、恵達に向かって手を振る。
「おはよ〜。」
挨拶を返して、それぞれ自分の席に着く。
が、3人の席はたいして離れていない。
美智子は恵の後ろだし、雅美は恵の隣。
担任がいい加減で、先日の中間テスト後に行った席替えは自由。
男女関係なく自分の好きな席に着いていいというものだった。
もちろん自由と聞けば、仲の良い友達同士で固まってしまう。
おかげで、恵達のクラスは授業がやりにくいと、先生達の間で問題視されているようだ。
「あ゛ぁ〜、朝から数学なんて……。」
授業の用意をしながらも、雅美が顔をしかめる。
「本当…。まだ眠ってる脳みそに、方程式なんて理解できないよね〜」
美智子もそれに続く。
「それもあるけどさ、朝から佐藤って結構キツくない?」
「言えてる〜(笑)」
2人で勝手に盛り上がってるし……。
美智子と雅美が言っている"佐藤"とは、佐藤 勇(さとう いさむ)。
数学の教科担任で、進路指導の先生。
朝からキツいって言うのは……。
ガラッ……。
「席に着いて〜。授業始めるぞ!」
噂をすれば……。
佐藤が教室に入ってきた。
色黒で日本人離れした顔。
これが2人の言ってた"朝からキツい"理由。
初めての授業の後で、雅美が付けたあだ名は"タイのキックボクサー"(笑)
話してみれば、外見とは違い優しい面もあり、恵からすると、どうして2人がそこまで毛嫌いするのか理解できないのだが…。
「起立・礼・着席」
日直の号令に合わせ、椅子をガチャガチャと鳴らし生徒達が席に着く。
「テストを返すから、名前を呼ばれたら取りに来るように。」
「えぇ〜?!」「いらね〜よ」と言う声を無視し、佐藤は名前を呼び上げていく。
3人の中で、出席番号が一番早いのは恵。
「小谷。」
名前を呼ばれ、前に出て行く。
手渡され、席に着く前に点数を確認する。
"95点"。
いい結果に、自然と恵の表情も和む。