僕らの日々は。 〜一か八か。〜-5
(春兄ぃ……ヤバイと思ったら回避した方がいいって。これは危険だよ)
(確かに……いや、でも……)
「……あれ?もしかして、苦手だった、キノコ?」
全く動かない僕に、一葉が不安そうに聞いてきた。
その瞬間僕は決意した。
…えぇい、一か八かだ!
パクッ。
モグモグ…。
ゴクン。
………あれ?
普通に……いや、むしろかなり美味いぞ?
「どう?」
「美味いよ。ホントに」
「そう!良かった」
イチカバチカなんて名前だからどんな味かと思ったら意外にも美味い。
なんだ、何も心配いらなかったんじゃないか。
そう思って二口目を食べようとして、
―――パタリ。
僕は倒れた。
「春風っ!?」
一葉が叫ぶ。
「………じ…」
「じ?春兄ぃ、何て!?」
僕は最後の力を振り絞って言った。
「…じ…時間差とは…味な、真似、を……」
「春兄ぃぃぃぃーッ!!」
陸斗君の叫び声を聞きながら、僕の意識は闇に落ちていった………。
×××××××××××
あの後30分して目を覚ました僕は、問題のキノコについて調べてみた。
あのキノコの本当の名前は『イツカハツカダケ』。
漢字で書くと『五日二十日茸』となる。『イチカバチカ』は一葉の聞き間違いだったらしい。
一本食べると5〜20日は起きないと言われる強力な睡眠効果のある珍しいキノコだそうだ。
「本当にごめんなさい」
「いいよ。嬉しかったし」
「ちゃんと調べてからにすべきだったわ」
「ま、毒じゃなくて良かったよ」