僕らの日々は。 〜一か八か。〜-4
「………ぇと、何?」
困惑しまくった僕を見て、一葉はにんまりしながら言った。
「誕生日、おめでと!」
「へ?……………あ。」
やっと分かった。
「え、何?春風ってばホントに自分の誕生日忘れてたワケ?まったくもう……」
…確かに、毎年僕は誰かに言われるまで誕生日だと気付かない事が多い。
今年も今まですっかり忘れていた。
「ちょっと待ってて」
一葉がとたとたと台所へ駆けて行き、
「おまたせっ!」
目の前に置かれたのは………鍋?どうやら先程からするいい匂いの正体はコレだったらしい。
「カレーよ、カレー。私特製ね。誕生日特別ver.よ!この街の山にしか生えてないっていう珍しい山菜を入れてみたの」
「………………」
「どうしたの、春風?」
どうもこうも無い。
嬉しいんだ。
『用件が分からず不気味』とか思ってたさっきまでの自分をどつき回してやりたい。
誕生日祝いにカレー、ってのがいかにも一葉らしいけど……まぁ、そんなことはどうでもいい。
「一葉、………ありがとう」
「いいわよこれくらい。あ、でも山菜探すのは結構疲れたけど。土曜日半日かかっちゃったし」
土曜日出掛けたのはその為だったらしい。
カレーをご飯にかけながら、何とは無しに尋ねてみた。
「あ、そういやその山菜って何なんだ?」
「キノコよ。…えーっと、確か名前は……」
カレーの準備も完了。見るからに美味そうだ。
確かによく見るとキノコのようなものがたくさん入っている。
さて食べ始めようかというときに、一葉が思い出した。
「あぁそうそう、
『イチカバチカダケ』だったわ、確か」
ピタッ。
僕の一口目を運ぼうとしていたスプーンが空中で静止した。
「えーっと………、なんだって……?」
「『イチカバチカダケ』。」「……………」
その瞬間、目の前にあったカレーが一瞬にして凶々しいオーラを纏ったような気がした。
『イチカバチカダケ』?
何だそのいかにもヤバイです、みたいな名前は…?
およそ食べ物につける名じゃないぞ。
そもそも食えるのか?
本当に食えるのか!?
「山の管理人さんに聞いた限りでは食べれるみたいよ?」
「管理人……ってあのボケたおじいさん?何て?」
「『食えるっちゃあ、食える』って。」
「………」
不安だ。かなり。
でもせっかく一葉が造ってくれた料理だ。食べないなんてとんでもない!
けど、イチカバチカって……イチカバチカって一体なんなんだ…!!