投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

『傾城のごとく』
【その他 その他小説】

『傾城のごとく』の最初へ 『傾城のごとく』 8 『傾城のごとく』 10 『傾城のごとく』の最後へ

『傾城のごとく』-9

千秋はため息を吐きながら、

「ペットを飼うってお金掛かるんだねぇ。私、こんなに持ってないや…」

すっかり意気消沈してペット・ショップを出る千秋を亜紀が慰めようと、

「あのさ、ウチの猫のさ、仔猫の時に使ってた寝床やトイレがまだあると思うんだ。もう使ってないから良かったらあげるよ」

千秋は亜紀の言葉に感激し、涙が溢れてきた。

「ありが…とう…亜紀ちゃん…」

それを見た亜紀はびっくりすると、千秋の頭を撫でながら、

「あーん、泣かないの。それよりもさ、家に帰ったら今日こそ言わないと」

千秋はただウンウンと頷くだけだった。

夕闇がせまり外灯が瞬く頃、千秋は例えようのない高揚感に包まれながら、自宅へと向かった。



千秋が自宅に着いたのは7時を少し過ぎていた。先ほどまでの高揚感は無く、逆におっくうに感じている。

(また、お姉ちゃんが嫌味を言うんだろうなぁ。それでなくても今日こそ仔猫の事を話さないといけないのに…)

そう考えるだけでお腹が痛く感じる千秋だった。

「ただいま」

キッチンに向かうと、母と姉が昨日と変わらず夕食を摂っている。千秋の顔を見るなり姉の小春が、

「今日も遅かったね。また男と遊んでたの?」

と、これまた昨日と変わらぬ嫌味。千秋は“この野郎!”と思いながら小春に言い放つ。

「そうよ!お姉ちゃんには経験無いでしょうがね」

この言葉に今度は小春が怒った。

「なんですって!中坊のクセに男と遊んで帰ってくるなんて生意気なのよ」

千秋も負けていない。

「だったら、お姉ちゃんも男作ってたまには遅く帰ってきたら!夕方5時にはいっつも家に居るクセに」

母は、しばらくの間二人の口喧嘩を眺めてからお互いを叱りつける。

「またアンタ達は!姉妹でいがみ合って。ホラッ、ゴハン食べなさい」

「お母さん。私、先にお風呂に入るよ」

千秋はそう言うと着替えを持って風呂場に向かった。小春はそれを眺めてから母親に、

「お母さん。あの娘どうしちゃったの?」

「その時になったら言うわよ」

笑みを浮かべながら言う母。まったく不安に感じていないようだ。

千秋は湯船に浸かりながら考え込んでいた。


『傾城のごとく』の最初へ 『傾城のごとく』 8 『傾城のごとく』 10 『傾城のごとく』の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前