『傾城のごとく』-8
「先生、このコ排泄しないよ」
「人間みたいにはいかないさ。それに最初だから根気よくやらなくちゃ」
「はい」
言われるままに肛門への刺激を続けていると、仔猫は“ブルッ”と震えたかと思うと排泄を始めた。
「先生!出たよ。おしっこもウンチも」
千秋は安堵の声をあげる。
「仔猫の内は自分じゃ排泄出来ないんだよ。だから食事の度に排泄をさせるんだよ」
「はいっ!」
千秋はその後、ゲージの掃除や補乳ビンの洗浄。仔猫の身体拭きなど一通りの世話を行った。
「ああ…君達、ご苦労様。今日はもう帰りなさい」
獣医の一言に、千秋は時計を見る。6時を少し回っていた。
「すいません。大した手伝い出来なくて…」
頭を下げる千秋と亜紀。獣医は微笑みながら、
「十分だよ。明日もよろしく頼むよ」
「はいっ」
“失礼しまーす”と帰路につく千秋と亜紀の二人は、にこにこと笑っていた。
千秋は亜紀にペコリと頭を下げると、
「亜紀ちゃん。今日はありがとう。一緒に居てくれたから何とかやれたよ」
「何言ってるの!あんたは私が居なくてもやれるよ。それより、あと2日間頑張って」
「うん、やれそうだよ」
と、千秋は大事な事を思い出した。
「ねぇ亜紀ちゃん。ついでに付き合ってくれないかなぁ」
動物病院を後に、千秋と亜紀は帰り道の途中にあるペット・ショップを訪れた。
「ねぇ、亜紀ちゃん。仔猫を飼うのに必要な道具って何かな?」
「そーねえ……まず、ミルクと補乳ビンね。それから寝床。トイレ一式……最初はそんなモノかな」
千秋は店内を物色する。
「あった。病院で飲ませているミルクと同じヤツ」
その値段を見て驚いた。“一缶2,000円”
(やっぱり高いや…)
その後も各商品を見つける毎に感嘆の声をあげる。寝床5,000円、トイレ一式5,000円。その他細かいモノも入れると、合計20,000円近く掛かる。