罪と罰-1
私達の想いは罪なのだろうか。
そこに男がいて。
そこに女がいた。
ただそれだけだ。
これは何かの罰ですか?
誰か答えてください。
「桜ぁー!!おはよー。久しぶりだね、こんなに早く来るのー!!!」
と、校舎2階から叫んでいるのは私の親友、佐野泉。今は3時間目の真っ只中。私の登校時間もおかしければ、彼女が授業中大声で私に話し掛けてくるのは些かおかしい。
「川上ー!今走れば給食は食わせてやる」
「えー、ダルい。し、給食はいらないし」
と、こぼしながら私は小走りで教室へ向かった。
「おはよう、川上 桜さん。生意気な走り方だな。相変わらずメイクも髪型もバッチリらしい」
厭味を飛ばしてくるのは私の担任、松坂 響。32歳。先程私に走れと叫んだ人物だ。独身の彼は、校則を守らず、まともに学校に来ない私を見守ってくれる唯一の先生だ。
「げー。今国語?分かってたら来なかったし」
「桜はどの授業でも変わんないでしょーよ」
「いい突っ込みだ、佐野。しかし、何回言ったら分かるんだ?頼むから、大声で教室から大声で叫ぶのはやめてくれ。せめて授業中は」
「はいはい、分かりました」
こんな会話は毎度の事だ。だが、クラスの子達は苦笑い、下を向く子。会話に入ってくる子はいない。私は陰でポーカーフェイスの不良。そう呼ばれているらしい。いつか泉が言っていた。私に話し掛けてくるのは、極僅かだ。
− 別に話したくない訳じゃないんだけどな −
ただ、人より少し冷めているなとは思うが、彼女達が話す内容や趣味に興味がないだけだ。冷たく接しているつもりはないし、不良でもない。普通の中学2年生だ。
− 普通でもないか… −
授業も終わり、お昼休みになった。私は、泉の他愛もない話を聞きながら泉の事を考えていた。
泉は何故私と友達なのかと囁かれるぐらい、純粋な子だ。彼女は小学生の頃からの付き合いで、それからずっと一緒だ。
[桜は、周りの子より見た目も大人っぽいし、綺麗。クールで一見冷たそうに見られるけど、そんな事ないのは泉はちゃんと分かってるからね]
と、彼女はいつか言っていた。人と関わるのを嫌い、信用できなくなった私にとって泉はかけがえのない存在だった。
− それともう1人… −
「さくらっ!」
「ほーら、お迎えだよ。桜」
泉がいつもの事、と言わんばかりの口ぶりで呟いた。
「せいやっっ!」
私は走って、その人物に駆け寄り腕をとった。