刃に心《第23話・勝利を手にした敗北者》-1
前回のあらすじ。
休日を突如として襲った謎の招待状。
朧、楓、刃梛枷、千夜子からの要請も有り、渋々ながらサバゲー大会に参加した疾風。
出だしは好調。もしかしたら、このまま優勝なんじゃねぇの?という雰囲気が漂い始めたその時!
目の前に現れた謎の集団。
朧を撃ち抜く凶弾。
相手はまるでカルト教団。
まあ、長々と語ってきましたが、疾風達の前に現れた、気になるその相手とは…
この私だああああ!」
バサッと漆黒の外套を脱ぎ捨てた下から現れたのは、実の妹、忍足霞。
真っ赤な軍服を着込んだその姿は何処かの総統似。
腰にはきらびやかな銀の軍刀。
ただ、軍帽の紋章は鉤十字ではなく、《霞》となっていたが…
「「「お前かいッ!」」」
「よく見なさい。前回の終わりから『』が続いてるでしょ」
「本当だッ!ナレーションかと思ったら『』が続いてやがるッ!」
勝ち誇ったような顔をする霞。
「そんなことより!お前、出なかったんじゃないのか!?」
「出ないなんて一言も言ってないわ。
ただ、兄貴と一緒に出ないとは言ったけど」
二の腕に巻かれた深紅の帯を揺らしながら、霞は不敵に笑った。
疾風は苦々しげに奥歯を噛む。
「…月路先輩は演劇部の部長だろ」
「そうよ。私のとっても大事な先輩。
でもね、今回の先輩は私の敵。だから、私は敵として排除したまでのこと」
相変わらず霞は微笑んでいる。
だが、その笑みは酷薄で冷たい。
疾風の姿がぶれた。
瞬時に移動した疾風は、短刀を抜き、霞の頭上から一気に振り下ろす。
ガキィン。
しかし、その刃は霞に届かなかった。
霞の左右に侍っていた者が手に持った銃剣を交差させ、霞を守った。
「そう、私は敵には容赦しない。喩えそれがとっても、とぉ〜っても大事な実の兄貴だとしても♪」
疾風は防がれたのと同時に飛び退く。
それから僅か後に双刃が空を裂いた。
「どう?我が〈ヘルミッションネルズ〉が誇る二人。
その名も〈霞専属近衛兵〉、通称〈KK〉の実力は?」
疾風は答えない。
他の者も同様だ。
銃を装備しているからといって、疾風のスピードは普段と大差ない。
霞によって強化されているとはいえ、あの一撃を防いだのだから相当なポテンシャルを誇ることだろう。
「まあ、兄貴。出会って早々だけど、終わりにしましょう」
「何?」
「やりなさいッ!」
霞が言葉を発するのとほぼ同時に左右の二人が前に出た。
先程までの銃剣は背面に回され、一方の手には機関銃、もう一方の手には三脚が握られている。
そして、一秒も掛からぬ内にその両方が合わさり、躊躇うことなく引き金が絞られた。