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ツバメ
【大人 恋愛小説】

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ツバメG-4

『…きゃ!』
綾瀬椿芽、またまた抱き締められちゃいました。
「……」
『……え』
でも、なぜか彼は優しく抱き締めてます。
不思議と嫌な感じはしない。
『……あの』
「……なに?」
『なにって……離して…ください』
「……してほしかったくせに」
『え!?』
驚いて彼を突き飛ばすが、抱擁から解放されても、体は全然動かなかった。
「………はい」
『……』
彼はあたしになにかを差し出してきた。
一瞬、それがなんなのかわからなかった。
『……あ』
それは、あたしが何ヶ月か前になくしたシステム帳だった。
『あ』
それでわかった。
システム帳には、スケジュールやアドレスの他に、燕への愚痴や上司への愚痴を書きなぐっているメモ欄があった。

それを見たんだ。

燕が冷たい、抱き締めてくれない、って昔書いた気がするから。
『プ、プライバシーの侵害!』
あたしはシステム帳を奪って叫んだ。
「……彼氏や友達や上司に拾われるよりましだったろう」
『……あなた、冷たいですね』
本当に、なんと言うか、綺麗なんだけど冷たい声を持っている。
「せっかく届けてあげたのに冷たいとは……ひどいね」
そう無表情で言う。
『……』

終電がきたので、走って電車に乗り込む。
しかし、扉が閉まる直前、強い力に引っ張られた。
『わっ!』
彼が腕を引いてきたのだ。
そして、そのまま電車から降ろされる。

ムカついた。
あたしは振り返って罵声を浴びせようとした。

その刹那。


『……』
「……」

あたしは彼に抱かれ、唇を奪われた。

もうわけがわからない。

この数時間での出来事にただ混乱した。

でも、そのとき、彼の名前を思い出したのだ。

合コンで控え目に言った名前は……


狩羽…鷹(かりうたか)。


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