ツバメG-3
『……やっぱりこうなるんだ』
「……はは」
二人は公園のブランコに並んで座って缶ビールを飲んでいた。
『でも、懐かしいなー』
「ああ」
『ほんと、大学時代に戻ったみたいね』
「たしかに。たまにはこういうのもいいな」
『うん!』
二人は時間が経つのも忘れて、いろいろなことを話した。
「あ、もうこんな時間か…」
『やば!終電に間に合わなくなっちゃう!』
「よし、駅まで走るか!」
『うん!』
駅はすぐ目の前だったが、二人はテンションが上がって意味なく走った。
『はぁっ……はあっ…』
「はっ…はっ…俺一番!」
『はあっ……もー、どうでもいいよ!』
「はは」
椿芽は切符を購入し、改札に向かった。
しかし、桜実はその場にただ立っていた。
『あれ、桜実くんは電車じゃないの?』
「俺はこの近所だから。歩いて帰るよ」
『そっか。じゃあまたね!』
そう言ってホームのほうを向いた瞬間、桜実は椿芽の腕を掴んだ。
「椿芽ちゃん…」
『……』
深夜独特の静けさが辺りを包む。
「……好きだ」
『……』
「燕は……きみには合わない」
『……』
「くっつけたのは俺だけどさ。数年も経つと、二人には違和感が見える」
『……』
「気持ちが通じ合っていない。それに……燕は、椿芽ちゃんのことを傷つけてる」
『……』
「いやなんだろ?あいつの軽さが」
『……』
「あいつじゃだめだ」
『……っ』
「俺じゃ……だめか?俺が……幸せにするから!」
『……』
あたしは何も言えなかった。
でも、確実にそのとき、あたしの中で何かが壊れた。
燕を一番知ってる人に、燕を否定されたから。
あたしは、また連絡する、とだけ言ってホームへの階段を駆け上った。
心臓の鼓動がハンパじゃない。
『……はぁっ、はぁっ』
「……」
『……え』
階段の頂上には、あの合コンで会った男がいた。
『…はっ…はっ…なに?』
「……」
彼は相変わらず何も言わず、じっとあたしを見つめてくる。
それどころか、あたしの前に立ち、行く手をふさいでいる。
『あの、なに?通して』
「……通ればいい」
彼は綺麗な声でそう言うと、すっと道をあけた。
『……ありが…キャッ!!』
「……」
彼はあたしの腕を掴んだのだった。
『なっ!なに!声出しますよ!』
「……出すなら出せばいい」
見事に人はいない。
それにしても、なにこの展開。
二話続けてこんな目にあうとは……
おっと今のは聞かなかったことにしてね。
ってそんなこと言ってる場合じゃなかった。
って………