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doll
【同性愛♀ 官能小説】

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doll V-5

「えっ。えーと。せっかくお風呂にきたんだから、入らないとね」
 照れ隠しかやや声高に言って湊は浴槽に迎う。裕奈も後を追いそこに浸かる。広い浴槽独特の解放感が全身を包む。
 二人は肩まで浸って壁に寄り掛かる。そして弛みきったお互いの顔を見て笑った。

 しばらく二人は何を話すわけでもなくただぼうっとしていた。本当に仲のよい友達とならこういった時間すらも心地よいという。湊はそれを実感していた。もっと実感していたかったけれど、湊は裕奈に尋ねる。
「裕奈ってさ。まだ智花の事好きなの?」
 沈黙が訪れる。さっきまでとはまた違った沈黙の時間だ。裕奈は少し驚いた表情を浮かべるが、また笑顔で答える。
「好きだよ。智花の事」
 ああ、やっぱりそうなんだ。妙に冷静に納得している自分がいることに湊は驚いていた。
「ふーん。智花も幸せね。裕奈みたいな美人から好かれているのは。でもさ」
 湊はそこで言葉を切る。少し迷うがそれでも言葉を紡ぎだす。
「そんな裕奈の事を智花に出会う前から、智花よりももっと好きだったらどうする?あたしが裕奈の事を。」
 裕奈は少し驚いた様子を見せるが落ち着いた口調で言った。
「急にそんな事言われても。湊は大切な友達だけど」
 湊の言葉は一度話し始めたら途中で止まることなんてできそうになかった。
「裕奈にしてみればあたしはただの友達かもしれない。でも、あたしは違う」
 裕奈はうんとうなずき肩を寄せる。
「智花が裕奈を受けとめてくれるかなんて分からないんだよ。でもあたしなら裕奈の事好きになれるよ。」
 まくしたてるように喋る湊も実は驚くほど落ち着いていた。
「湊の言っていることめちゃくちゃよ」
 湊は今にも泣きそうな顔していた。湊はあらためて裕奈って大人なんだなと感じる。結局自分は子供で裕奈と身体の関係を持つことでどこか安心したかったのかもしれない。
「めちゃくちゃじゃ駄目かな?」
 湊は裕奈の手を取り、合わせる。
「駄目じゃない。だからあたしももう少しめちゃくちゃなことさせてもらっていいかな?」
 そして再び沈黙が訪れる。湊は顔を手で覆った。いったいどんな顔を見せればいいのか分からなかったからだ。肩まで湯槽に浸かり。そのまま顔まで浸かっていく。
「はあ。わかったわよ。裕奈にそんな顔されたら頷くしかないじゃない。」
 湯槽から顔を出した湊はそう裕奈に告げる。
「ありがとう。湊。あたし。湊が好きよ」
「もちろん。あたしも好きだからね」
 他の誰もいない浴室でよかった。湊は二人の笑い声がこだまする中でそう思う。湊はの胸の中は嬉しさと悲しみの交じった思いで張り裂けそうだった。そんな情けない顔が見られているのが裕奈だけだったから。


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