怪談話CASE:FINAL 『水色のぬいぐるみ』-1
ぬいぐるみを拾った。
水色の、クマさんのぬいぐるみ。
爪も生えていて、中々リアルなぬいぐるみだ。
「おおぅ、可愛いぬいぐるみじゃん」
「でしょー? 部屋が寂しかったし、ナイスタイミングっていうか」
近所のファミレス、午後11時。
私は親友の香苗と共にいた。
手にはもちろん、薄汚いぬいぐるみを持っていて。
「んでもさ、なんでそんなん拾ったの?」
コーラを飲みながら、ふとした疑問。
「学校に落ちててさ、なんかちょっと汚いけど洗えばいいかなって。っていうか、愛着沸いちゃってさー」
「ふぅん。物は大事にしろよぉ」
「うんうん。わかってるわかってる」
隣に置いてあるぬいぐるみを撫でながら、私は適当に返事を返した。
★
家。
結局香苗と深夜まで語り明かしてしまった。
さっさと風呂入って寝なくては。
脱衣所まで来た時、ぬいぐるみのことを思い出した。
そうだ、洗わなくちゃ。
汚いまんまじゃ可哀相だもんね。
「一緒に入るかー?」
30センチくらいであろうぬいぐるみを抱えて、私は浴室のドアを開けた。
「〜♪」
一通り自分の身体を洗った後、ぬいぐるみを洗い始める。
思ったより簡単に汚れは落ちて、綺麗な本体が残った。
「はい。綺麗になりましたねー」
風呂から出て、適当にドライヤーをかけて乾燥させた後、ベッドまで持っていった。
明日はバイト休みだし、たっぷり寝ようかな、なんてことを考えているうちに、睡魔に襲われ、私はあっさりと眠りに落ちた。
★
翌日。
「あれ? ぬいぐるみがないし」
確かに隣に置いて寝たはずなんだけど…。
「あ。あった」
ぬいぐるみは、ベッドから遠く離れたリビングに置いてあった。その距離約10歩分、転がっていける距離じゃない。
「どしたんだろう? まぁ、いっか」
寝ぼけてて大して驚かなかった私は、ぬいぐるみを連れ戻して、再び睡眠を貧るためにベッドに戻った。
今度は逃がさないように抱きしめたまま。