怪談話CASE:FINAL 『水色のぬいぐるみ』-2
「ぅ…寝過ぎたか…」
再び目を覚ますと、辺りはすでに真っ暗闇になっていた。カーテンを通す光なんて存在しないし、部屋の電気も消して寝たので真っ暗闇である。
「今…何時だろ」
携帯を見ると、デジタル文字は18:03と表示していた。
おかしい。
18時でこの暗さはありえない。
深夜2、3時レベルの暗さだ。
気味が悪くなった私は、慌てて部屋の電気を点けた。
パッ、と目に優しい光に包まれる。
「…またいない……」
ぬいぐるみがまた消えた。
しかも今度はリビングにはいない。
どこを見渡してもいない。
「もぅ〜。見つかったら棄てよう、気味悪いんだから」
まさか外にでるわけないし、家の中にあるはず。
「あ、あった……」
最後にダメ元で開けた押し入れの中に、あの水色のぬいぐるみはあった。
しかも押し入れのなかに潜らないと取れないような奥のほうにひっそりと。
「な、なんで…気味悪い…」
押し入れの中に腰を屈めて入ると、ぬいぐるみを掴んだ。
ピシィッ!!!
「きゃあっ!!」
ぬいぐるみを掴んだ瞬間、大きな音を立てて押し入れがしまる。
そして、部屋の電気がフッと消えた。
「あ、開かない…っ…」
ドアは固く閉ざされ、開く気配がない。
「助けてー!! 誰かー!!」
叫びながら、全力でこじ開けようとすると、押し入れに僅かなすき間があいた。
「よし……っ……!!」
喜びもつかの間、私は全力で自分の口を押さえた。
いる。人ではない何かが。
手足逆、顔も逆、目が赤く光る何か。
フラフラと部屋の中を歩き回っている。
大きい声を出せば殺される。そう直感で感じた。
「なに…あれ…」
息を殺し、気配を感づかれないように隙間から覗く。
ふらふら歩く何かは、しばらく部屋を物色した後、玄関のほうに出て行った。
と、その時、部屋の電気が復活する。
よかった――。
今から香苗に来てもらおう。二人なら怖くないし、何より香苗は霊なんて信じてない。
―香苗なら助けてくれる。
押し入れをそーっと開けてみる。
意外と簡単に押し入れは開いた。