セピアの後ろ姿-1
今はもう、色つきでは思い出せなくて。ただ俺の心に残っているのは、セピア色になってしまった君の後ろ姿だけ。
まだ俺が気持ちを正直に伝えられないガキだった頃、君の姿が目に止まった。
ちいさくて、壊れそうなくらいに細い体をしてたね。
それでも君の笑顔は、ひねくれもんの俺に力をくれたんだ。
肩を並べて歩くことも出来なくて。いつも君の後ろ姿を見ていた。
君は時々振り向くと、まるで母親を見つけた子どもみたいな顔をしてたね。
守りたかった。
ただ、君の隣にいたかったんだ。
あの時は鮮明に思い出せたのに、今はノートに書いた落書きみたいに、少しずつ削られていく。
夕暮れ。
放課後。
赤い廊下。
もう、それくらいしか思い出せない。
君は、今なにをしているのかな?
元気なのかな?
毎日楽しくやってるのかな?
あの時、俺に勇気と正直になれる心があれば。
後ろ姿じゃなくて、君の横顔を見られたはずなのにな。
たまに思い出して、ガキだったと笑ってみる。
結構大人になっただろ?
いつまでも、忘れないでいよう。
このセピア色になった後ろ姿を。