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H.S.D
【学園物 恋愛小説】

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H.S.D*last*-6

ニヤニヤと笑うたくさんの顔があたしたちを見ていた。
その中心にいるのは好美と樋口。
「作戦成功〜♪ま、抱きしめるとまでは思ってなかったけどね」
「おまえら焦れってぇんだよ!ここまでしないとくっつけないのか!」
どうやらあたしたちを閉じ込めてみんなで会話を聞いていたらしい。みんな酔って寝たふりまでして何してんだか。あれ?てことは…
「好美と樋口のあのイビキってうそ!?」
あたしの言葉に苦笑する二人。
「いや、あれは真面目に寝てた」
「予定外だったけどな」
「なっ…いつ目ぇ覚ましたの!」
やつらは二人同時に声を合わせ
「『迷惑じゃない?』から!!」
…ほぼ最初じゃねえかよ。
矢上は「え〜…」と顔を歪めた。
「ま、何はともあれいいじゃないの!」
好美がガッハッハと豪快に笑う。
「うちらの大事な音羽、大事しなよ。音羽も、よくやった!はい拍手!!」
バチバチと割れんばかりの拍手喝采を浴びるのはなかなか良い気分で、あたしと矢上は顔を見合わせて思わず笑ってしまった。




桜が咲き誇る。
あたしの胸には卒業証書がしっかりと握られている。
「はぁ〜卒業かぁ。あっというまだったな」
好美がしみじみ呟いた。
「うん、楽しかったね、高校生活」
あたしたちは窓から外を見ている。
そういえば好美と夜、学校に来たことがあったな。矢上はここでこうやってあたしたちを見てたのかな。
「何が一番って打ち上げだよねぇ、やっぱ!」
思い出したように好美がクククッと笑った。
「あんなことするなんてほんっと信じらんない。何であんなことしたの」
「何でって…樋口も言ってたでしょ?焦れったかったの」
好美が頬杖をついて遠くを見つめる。
「焦れったいて?」
「好きだったんでしょ?違う?」
ニッと好美の口元が上がる。
バレてたか。
「でも矢上が違かったら?」
あたしがそういうと好美は「あ〜それは無い!」とブンブン手を振った。
「みんな分かってたもん」
「何を?」
好美がうーんと伸びをして足元に置いてあったカバンを掴んだ。
「あんただけだったんだよ、矢上が名前で呼んでたの。本人は気付いてないかもしれないけど、初めから音羽を気に入ってたのかもね。あんたも気付かなかった?」
「ぇッ…」
さぁっと風が吹いた。
「あたしは先に行ってるね」
好美が教室を出ていく。
しばらくボーッと立ち尽くしていたあたしの姿は何と滑稽だったろう。
「音羽ちゃあーん!」
外からあたしを呼ぶ声がする。見ると矢上…じゃない、瑞樹が外からあたしを呼んでいた。
「好美ちゃんも行っちゃったよ!オレたちも卒業式の打ち上げ行こーよー!」


あたしは絶対忘れない。高校で過ごした日々。
どんなに歳をとっても、あたしの中でいつまでもキラキラ輝いているに違いない青春の日々。


桜が咲き誇る。その手前に立つ瑞樹が妙に綺麗に見えた。今すぐ傍に、瑞樹の隣に行きたかった。
「うん!今行くからちょっと待っててぇ」
あたしも瑞樹にそう叫ぶとカバンを肩にかけた。


FIN.


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