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H.S.D
【学園物 恋愛小説】

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H.S.D*last*-5

「顔あげて…」
矢上が呟く。それと同時に矢上は徐々に顔を上に向かせていく。やっぱり抵抗する気はない。
矢上と向かい会う。
矢上は少し微笑んでいるようだった。
言わなきゃ…言わなきゃ…。
「あたしも…」
自分の声が震えているのが分かった。言葉がちゃんと出てこない。
「あ、あた、あたしも…」
もう少し、あともう少しなのに。
目を閉じて深く深呼吸する。浮かんでくるのはどうしてか矢上ばかりだった。


あぁ、最初は睨まれたっけな。死ぬほど嫌いだったよ、その冷たい目。でもいつからだったろ?冷たい目が温かくなり始めて、少しずつ笑いだして、そんな笑顔をもっと見たくて、あたしが笑顔を引き出してあげたくなって……ねぇ、それってさ、あたしってさ…


「…好きだよ」


ゆっくり目を開ける。そこにあったのは、あたしが大好きな矢上の笑った顔。
「あたしもね…好き」
しばらく見つめ合う。
あたしは矢上が動くまで動かないと思う。


その時…


矢上がニカッと歯を見せて笑ったと思った。

ら!

「…おうっ!」


矢上がガバァッとあたしに抱き付いてきた。
ふわんと矢上の香りがする。軽い圧迫感に心臓はドキドキと素直に反応していた。
「や、矢上!?」
パニックだ。脳内カーニバルだ。
あたしはどうすればいいのだろう。
あれやこれや考えていると
「ほんとにっ!?」
明るい矢上の声が耳元でした。意外に大きな声のため耳の奥が多少キーンとなった。
「うん。本当に…」
「え、まじ!?」


ん?


扉のむこうからしたぞ、今。
「うっそ〜。こんなうまくいく?普通」
「やってみるもんだな」
いやな予感がする。矢上に抱きしめられたままあたしは「まさか…」と唸った。

―シュッ…パン!

そんな音と同時に目の前に久々の光。目が慣れてないためツンと痛くなる。
あたしはギュッと目を閉じているにもかかわらず、たくさんの視線を感じる。
目の前に手でひさしを作るとゆっくりと目を開けてみた。


やられたと思った。


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