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光の風
【ファンタジー 恋愛小説】

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光の風 〈影人篇〉-8

コンコン

「失礼致します、陛下。遠征部隊長、黒大寺聖です。」

ノック音にひかれて二人とも扉の方を見ていた。正体を知り、お互いに顔を合わせる。サルスが頷き、それを合図にセーラが扉に手をかけた。ゆっくりと開かれた向こう側に聖がいた。

「セーラ?」

予想もしない人物の登場に思わず声が出てしまった。聖の問いにセーラは頭を下げて応え、彼を招き入れる。

「どうぞ、お入り下さいませ。」

中に入って見たものは部屋の主ではなくサルスだった。気のせいか元気がない。二人きりでいても、そう楽しい話をしていたわけではないのは明白だった。

「よう。カルサはどないしてんや?」

「リュナの所に行くと出ていった。少し前の話だ。」

「そうなんや。ほな、しゃあないな。」

空振り訪問にがっかりしたのか聖は頭をかきながら部屋の様子をうかがった。それを不思議そうにサルスとセーラは見ている。

「食いかすがないな。」

ぼそっと呟いた声を二人とも聞き逃さなかった。

「食いかすですか?」

「ああ。なぁサルス、自分知っとったら教えて欲しいんやけど。」

「何だ?」

「貴未知らんか?」

貴未といえば、ついさっきまでサルスが姿を借りていた人物だった。会議に行く前、カルサの提案によって貴未の姿を選んだのだが。

「そういや、何で貴未の姿が借りれたのか聞いていないな。」

レプリカもサルスと同じように考え込んでしまった。

思い出そうとしても最近の貴未の行動が出てこなかった。

「ついでに言うとやな、あいつもおらんねん。あのキーマン。」

「日向の事か?」

カルサやリュナを目覚めさせる鍵となった人物、というところから日向はキーマンと影で呼ばれていた。サルスもそれを知っていたから伝わったらしい。

あまり自由に動き回れない身となったサルスはまわりの動きに敏感ではなくなっていた。

しかし城の中をセーラとして動き回っているレプリカにさえ分からない事だった。

「カルサやないと分からんか。」

「…悪い。」

聖がため息混じりに呟いた言葉はサルスの胸を締めつけてしまった。結果、苦悩の声がサルスから漏れた。その声に敏感に反応したのはレプリカだったが、彼女が物言う前に話したのは聖だった。


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