光の風 〈影人篇〉-6
「ナル!」
最初に出迎えたのはナルの衛兵となった紅奈の声、ナルはその声に笑顔で答えた。
「びっくりしたわ!なんや静かやと思たら…一体何しとってんな?」
「少しお話をさせてもらっていたのよ。」
地べたに座ったままナルは紅奈を見上げた。紅奈は不思議そうにナルとラファルを見比べた。
「話て…ラファルと?」
紅奈の言葉にナルは微笑むだけだった。ありがとうございましたとラファルに頭を下げ、立ち上がる。その表情は厳しいものにかわっていた。
「紅奈、この城の…この国の強化をします。」
「強化?」
「貴方だけに教えるわ。付いてきなさい。」
ナルは紅奈の返事を待たずに歩きだした。すぐさま紅奈はナルに付いていき、二人は部屋を後にした。
部屋に残されたラファルのもとには瑛琳がいつのまにか付いている。ほほ笑みかけて、そっと抱きしめた。
「ラファル…。」
名前を呼ばれて瑛琳に頭をすり寄せた。嬉しさから抱きしめた手に少し力を入れる。
ラファルには伝わっていた、瑛琳の気持ちはラファルの気持ちそのものだと知っていた。
「あの方を守らなければ…こんなにも…大きく包んでくださる。」
切実な想いは声にすると涙にしてしまいそうだった。泣かないと決めている、強く生きて、最後に泣こうと心に決めた。
しかしこんなにも人の心の暖かさが心を動かす。嬉しいのかそうでないのか、それさえも分からなくなってしまいそうだった。
瑛琳には彼女達がどこを目指したのか分かっていた。そこは東の塔の上、誰にも知られない入り口から続く道の先。
今ナル達はまさにその入り口の前に辿り着いていた。
「いい、紅奈?一度で覚えなさい。」
紅奈の返事を聞くとナルは扉の周りの壁を叩き呪文を唱えた。その瞬間、扉の模様が変わり自動的に開き始めた。薄暗い扉の向こうはナルが一歩足を踏み入れた瞬間に光の灯る道へと変わる。
長いら旋階段を上っていくと、やがて扉が見えてきた。その前で立ち止まりナルは紅奈の方を振り返って見つめた。
「この先です。」
紅奈が頷いたのを確認するとナルは扉に手をかけて開いた。中から光が溢れてくる、目が慣れた頃にはナルは既に部屋の中にいた。
彼女の横には光り輝く大きな結晶体があった。