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光の風
【ファンタジー 恋愛小説】

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光の風 〈影人篇〉-4

封印したはずの二人が今目覚めているにもかかわらず、あの侵入者達はなんの動きも見せなかった。まだ気付いていないなど有り得ない事。

様子を伺っているのか、それとも動いているのか、泳がされているか。いずれにしても何の目的で殺さずに封印したのかが見えてこなかった。

生きているのが不思議とさえ思えるくらいだった。

「ラファルはどうしてるの?」

「ナルが話をしたいとかで連れていったままだ。」

リュナの問いに答えながら、ゆっくりとリュナをベッドに寝かせた。少し曇りだした表情を見ての判断だろう。今日はやけに天気がいい、普段なら喜んで中庭に散歩にでも行くところだが今では状況が違う。

「少し休んだ方がいい。」

カルサの言葉にほほ笑み、直に寝息をたて始めた。明らかに体力も落ちてきている。

「社(やしろ)。」

呼ばれた風の精霊はリュナの体を光らせ、中から姿を現した。小さな人型の姿、それは全身でリュナの顔程の大きさしかなかった。

「どうだ?」

カルサの問いに表情を曇らせリュナを見た。少し痩せた彼女の姿ははかなさを思わせる。

《我が主人は衰弱している…呪の様子は確かにないが…。》

見つめる先のリュナは眠っている。社は思うところがあるのだろう、リュナを見つめたまま黙ってしまった。やがてカルサの方に視線を向けた。

《私と一体化していないと、主人はもっと衰弱してしまう。私のエネルギーを持ってしての今の状況だ。》

「社がいなければ生きてはいない…という事か?」

《それほどまでに力を失っている、という事だ。》

想像以上の事態にカルサは厳しい顔をしてため息を吐いた。手で顔を覆い耐えきれない現実に耐えるように体を縮めた。

「なんでこんな…っ!あいつの仕業なのか?!」

《いや…術の気配がしないのも確かなこと。光の力を持つ者よ、我が主人から魔性の気配がするのだが…。》

社の言葉にカルサは過剰反応した。勢い良く顔を上げ社を見つめる。明らかに動揺していた。

「なんだって?」



リュナを見たあと、もう一度社に同じ言葉を投げかけた。

「一体どういう事だ?」

社はリュナを見つめたまま黙ってしまった。カルサの頭の中は有り得ないという言葉でいっぱいだった。

魔性の力をリュナが持っている。それはつまりリュナが魔物であるか、魔物の血をひいているという事だった。

魔性の力を持つ者は基本的には光が溢れる世界では暮らせないといわれている。つまり人間が住む世界とは違う、空から光が届かない世界に住んでいるとされていた。

しかしリュナは今まで当たり前のように人と暮らし、カルサの傍で生きていた。リュナが魔物であれば有り得ない事だ。では封印された時に何か起こったのか、しかし呪も術の気配も感じられないという事は魔性の力を植付けられた訳ではない。

考えれば考えるほど分からなくなるだけだった。


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