光の風 〈影人篇〉-3
「私だ。」
すぐに扉は開かれ、中にいたセーラが招き入れた。
「奥の寝室にいらっしゃいます。」
お辞儀をしたままセーラは報告をした。カルサはそうか、と呟き寝室に繋がる扉を見つめた。
「セーラ、サルスの所にいってやってくれないか?」
その声は切ないもので、彼女には胸が痛いほどだった。状況を察し、すぐに返事をしてサルスの所に向かう。
カルサは寝室に繋がる扉に向かった。明るさのない部屋、日の光が差し込むものの内側から光るものはなかった。ノックをして扉を開ける。
「リュナ。」
部屋の主はベッドの上で本を開いていた。来客の正体に気付いた瞬間、彼にしか見せない笑顔を惜しみなく出す。
「カルサ!お疲れさま、会議は終ったの?」
リュナの笑顔につられてカルサも笑顔になった。彼女の傍、ベッドに腰掛け、ああ、と答えた。
「調子はどうだ?」
「まだ体が重たくて…少し息苦しいの。ほら、天気がいいからかしら?」
「そうか。」
目覚めた後、リュナの体調はあまり良くなかった。常に息苦しさを訴えベッドの上で過ごす日々が続いている。特に天気の良さに比例して体調が変わっていくのが分かった。天気がよければ体調は悪く、天気が悪ければ体調はマシになるといったようだった。
「術や呪はかかっていないとはナルも言っていたが…。」
「大丈夫よ、きっと後遺症のようなものだっておっしゃってたじゃない。」
明るく振る舞うリュナにカルサは切なさを覚えた。そっとリュナの手を取り回復魔法をかけ始める。
「気休めにすぎないが…。」
「…ありがとう。」
痛いくらいのカルサの心の叫びが魔法を通してリュナの中に入ってくるようだった。今間違いなく彼は自分を責めているに違いない。
「自分を責めないでね。」
カルサの考えることは分かっている、また自分を責めて自分を否定して全てを背負いこもうとしているのだ。眉間にシワが寄っていた。リュナが眉間に指をあてると、カルサは恥ずかしそうに笑った。どことなく切なさが見えた。
「あなたが自分を責めたら…私も自分を責めてしまう。」
リュナは空いている方の手でカルサの頭を撫でた。安らぎが生まれる。どちらが癒されているのか分からなくなり、はにかんでしまった。
「…近いうちに総本山に行かなくてはいけないな。」
「私も行くわ。」
「頼もしいよ。」
どちらからともなく二人は抱き合った。不安と切なさとが重なり合って自然と表情も歪んでしまう。
もう既に始まっている。