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光の風
【ファンタジー 恋愛小説】

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光の風 〈影人篇〉-2

国王であり御剣である雷神が死ぬのと、秘書官が死ぬのではあまりにも重さが違いすぎる。サルスは国の事を思って自らの存在を消した。カルサはそうすることを分かっていた。

「当たり前だろ?国を守るのがオレの務めだ。」

カルサは笑っていなかった。そこには国王としての威圧を放つカルサがいた。何も話さない老大臣と睨み合いがつづいた後、カルサは彼の傍に寄る。

「話は終ったな、行くぞ。」

扉へ向かう背中越しに老大臣の気配を感じる。

「陛下、城を空けられるのは雷神の仕事ですか?」

「まぁ、そんなところだ。」

そう答えた後、カルサは会議室を出ていった。足音がだんだんと遠ざかっていく。一人残された老大臣は深いため息を吐いた。

「何を馬鹿な…陛下はやさしすぎる。」





カルサが目覚めてから、しばらくしての事だった。

カルサはすっかり国務に戻り、今までカルサに扮していたサルスは別の人間の姿を借りてサポートする形をとっていた。

それぞれもまた今まで通りの生活を送っている。嵐を終えて、また平和な生活に戻ろうとしていた。

会議室を出て、カルサの私室の前には部屋の主を待ちわびた貴未の姿のままのサルスがいた。何も言わずカルサは扉を開けて中に入る。サルスもそれに続いた。

「大臣はなんと?」

「くだらない話だ。よほどオレが気に入らないらしい。」

ソファに腰掛けため息を吐くのは手慣れたものだった。髪をかきあげ浮かない表情をしていた。機嫌が悪かったり落ち着かない時によく見せる仕草。

「本当にいい話じゃないようだな。」

「だから言ったろ?くだらない話だと。」

勢い良く立ち上がり、堅苦しい上着を脱ぎ捨てた。そのまま外に続く扉へ向かう。

「どこか行くのか?」

「リュナの所に。」

答えた瞬間に扉は閉まった。貴未の姿のサルスは術を解き、自らの姿を取り戻した。手を握っては開く、まるで自分を確かめるように見つめていた。

「何が本当か分からないな。」

苦笑いで呟いた言葉には全て含まれていた。自分で選んだ道なのだと分かっていても難しい。頭に気持ちが付いていかない、そんな自分に嫌気をさしていた。

 一人になるのはイヤだった、余計な事を考えすぎて気持ちが下に向いてしまう。苦しい気持ちを押し込めるようにサルスはしゃがみこんでしまった。等身大の鏡には、そんな彼の姿が映されていた。

そんなサルスを気にはしているがカルサはそれ以上に行かなくてはいけない所が有る。足早に向かい、目的地の扉をノックした。


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