一言、伝えたくて-1
月明かりだけが、ゆらゆらと私の周りを包み込む。
私は、ひしゃげたガードレールの前に立ち、携帯電話のボタンを押した。
『おかけになった番号は、現在使われて……』
私は構わず話始める。
『ケンちゃん、どうして死んじゃったの?私、寂しくてどうしたらいいのかわからない』
『もう一度番号をお確かめになり………』
『ケンちゃん、電話出てよ!』
『おかけになった番号は、現在………』
私は、電話を切る。
寂しさが込み上げて、目から熱いものが流れた。
ピルルルルル……
『はい』
『アキコ』
『ケンちゃんなの?』
『俺は、まだ君の事を愛してい』
『ケンちゃん』
『おかけになった番号は、現在………』
あれは、紛れも無くケンちゃんの声だった。
大好きだったケンちゃんが最後に残してくれた言葉。
愛してる
時間がなくて言えなかったけど私も、ケンちゃんのこと今でも…
『大好きだよ』
完