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アウシュビッツの罪
【エッセイ/詩 その他小説】

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アウシュビッツの罪-1

人を殺めたら一生償い続けなければいけないのでしょうか。
人を傷付けたらずっと負い目を感じていなければいけないのでしょうか。
加害者には生きる権利などないのですか。
加害者には笑うことなど許されないのですか。

ずっとずっとずっと―――

日陰で生きて罪を背負って。幸せからできるだけ遠ざかって。
罪は確かに重いけれど。もうソレは二度と戻ってはこないけれど。
それでも願ってしまうから。
生きることを。
それでも続いてしまうから。
私たちの生命は。
消えてくれない生への渇望。

―――それは、欲望。

醜いのでしょうか。幸せになりたいと言う気持ちは。
奪ったら差し出せと言うのでしょうか。
人ひとりの命を奪ったら自らの命を?
人ひとりを傷付けたら同じ傷を?
そんなことは私にはできないのです。

―――怖くて怖くて。

傷付けたくせに傷付くのはとても怖い。
エゴ。我が儘。
そんなことは百も承知だけれども。
それでも私はあなたよりも幸せになりたいのです。
あなたが得るはずだったのよりもっと幸福な人生を望んでいるのです。
何一つ不安も傷もない人生がほしいのです。

………………。

あの人は言いました。
私は一生償い続けないといけないのでしょうか。
一生あの出来事を背負って生きていけないといけないのでしょうか。
私だって幸せになる権利があるのです。
もうそろそろいいでしょう……。

そう言って画面から消えたあなたが信じられませんでした。
わかるけど、それは言ってはいけない一言でした。
それだけは絶対に。
何百万もの人をなぶり殺したあなただけは。
二度と帰ってこないものを生み出したあなたが言ってはいけない気持ちだったのです。

―――わかるからこそ苦しかった。
それはあまりにも人間らしい気持ちだったから。
むき出しすぎて私には痛かったのです―――

それは、私がずっと言いたくて言えなかったことでした。
もう許してよ、もう忘れてよ。
何回叫びだしたくなったでしょうか。
何回消したくなったでしょうか。
消したくなったのは記憶。本当は私自身。
でも言わなかったのは自分のホントウの気持ちが怖かったから。

―――見たくなかった。知りたくなかった。

今も私は、その記憶を封印するための作業を必死に行っています。
埋まったら無くなるのでしょうか。
枯れ葉や動物の死骸がいつか土に返っていくように。
少しはこの世界に役立つ成分になりうるのでしょうか。
そうすれば、少し救われる気がするのです。

埋まればいいモノは何ですか?
無くなればいいモノは何ですか?


救われるのは、一体誰でしょうか?


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