恋人達の悩み 3 〜後輩〜-8
休み時間になるのを見計らって教室に行くと、口笛と歓声に迎えられた。
持ち上がりなので変わらない顔ぶれのメンバーが、二人を冷やかす。
「よっ、お二人さん!」
「朝寝坊か?」
龍之介は赤くなった。
「ばっ……!」
慌てて反論しようとする龍之介を、美弥が制する。
「やり過ごすのが一番よ」
言って龍之介の手を引き、席に腰掛けた。
その泰然と構えた様子に気圧されて、周囲の方が黙り込む。
龍之介は感心しながら、隣の席に腰掛けた。
『伊藤』と『高崎』。
苗字からすると本来なら離れた席のはずの二人が二年生になってから隣同士の席になっている理由は、ただ一つ。
付き合っている事が周囲に知られているので、気を利かせたクラスメイト達が始業式の日に席替えをして、無理矢理二人を隣にしたのだ。
――そんな事をしてしまうくらいにこのクラス、非常に纏まりがいい。
常に自然な形でリーダーシップを発揮する龍之介がいるために、クラス全体の仲がえらくよろしいのである。
そうやって自然とクラスを纏め上げる龍之介が何となく苦手で日常会話どころかろくすっぽ挨拶もしていない、まさしく顔見知りのクラスメイト程度の仲でしかなかった美弥が、ここまで親しくなる前から一方的に龍之介の心を射止めていたのは、やはり運命なのだろう。
「でも何で、遅刻してきたのよ?」
近くにいたクラスメイトの女子がそう言うと、龍之介は頬を掻いた。
「いやちょっと保健室に……」
「私が具合悪くしちゃってね。龍之介に、保健室へ連れてって貰ったの」
美弥のフォローに、ぐふふ、とクラスメイトが怪しげな笑い声を出す。
「つわり?」
「またそう言う……」
美弥は眉をしかめた。
「だって毎晩えっちしてるんでしょ?」
「毎晩は大袈裟よっ」
反射的に反論してから、美弥は慌てて口を押さえる。
「ほほーう」
にまりっ、とクラスメイトの目が細まった。
「毎晩じゃなくてもえっちはしてるワケねぇ」
「いーでしょ付き合ってるんだから!」
頬を真っ赤にした美弥の言葉に、クラスメイトはにやにや笑う。
「別にぃ。まずいとか悪いとか、あたしは一言も言ってないわよん」
「……」
この勝負、美弥の負け。
などと賑やかにやっているうちに、教師がやって来た。
「点呼取るぞー」
いつもと同じ、不真面目でもないがやる気満々とも言えない教師の声。
そうやって日常の中へ埋没していくと、美弥は谷町菜々子の事など忘れてしまっていた……。
「やっだぁ……ここでするの?」
「時間ねえんだろ?せめて本番くらいはさせろよ」
あちこちでいちゃつくカップルばかりが目立つ、夜の公園。
中には茂みに隠れて良からぬ振る舞いに及ぶ恋人達もおり、ピーピング趣味を持つような連中の餌食にされているのだが……。
ここにも一組、良からぬ振る舞いに及んでいるカップルがいた。
「っもう……これっきりだかんね!」
元気が溢れ出る、若いというよりまだ幼さの残る女の子の声が、苛立たしげにそう言う。
「今回はあたし、本気になれそうなんだから!」
「あ?その高坂とかいう先輩か?」
背後から女の子に組み付いている男は、声に面白そうな響きを含ませた。
「高坂じゃなくて、高崎!高崎龍之介先輩よ!」
男は女の子のやや控えめサイズなBカップの胸を、やわやわと揉みしだく。
「あっ、ん……」
びくん、と女の子が震えた。
「お前マジ乳首弱いよな」
女の子のうなじに舌を這わせながら、男は言う。
「先輩はっ……あんたみたいにすけべばっかり考えてなさそうだしっ……爽やかで、凛々しくてっ……ぅあ、ふ、くうぅ……!」
ずちゅうぅ……
男の肉棒が割り込んで来たために、女の子は声を出した。
「うっせ……男はみんなすけべぃなんだよっ!じゃなきゃ、人類繁栄はありえねーんだからなっ」
「な……によそれっ……あ、ふあぁ……!」
「長いち〇ぽで子宮ぐりぐりされるの、好きなくせに……これだけ長いの、そこら辺にないぞ?」
女の子は、喘ぎながら笑う。
「へ、いきっ……先輩、立派だもんっ!」
男が、むっとした顔付きになった。
「どこで見たんだよそんなモノ」
「一目惚れ、してからっ……!着替え、覗いたもんっ……カラダはけっこう細く見えるけど脱ぐと凄い筋肉質で……アレも、勃ってなかったけどデカいのっ……ぱんつ下ろされた時に、見ちゃった……うきゃ、あ、はあ!」
男の動きが急に激しくなり、女の子は悲鳴に近い声を出す。
「変態女」
呟きながら、男は腰の動きをさらに激しくした。