ある日の告白-1
「その……先輩。私と……私と、付き合ってくださいっ!!」
突然の告白にボク【赤守 優 あかがみ ゆう】は唖然とした。いや、こうなるだろう事はなんとなく、体育館裏という場所に誘われた時に予想できたのだけれど……やっぱり、実際こういう事になると驚くとうか、戸惑ってしまうわけで……。
「え、えと……その」
「先輩?」
「ううん。ちょ、ちょっと考える時間が欲しい、かな?」
「はぁ……。でも、わがままなのはわかっていますけど、私は、今すぐにでも先輩の返事が聞きたいんです!」
顔を真っ赤にさせながら答える彼女の勢いに、ボクは「うっ」と唸り、たじろいだ。
たぶん、ボクも彼女に負けないくらい、顔が真っ赤になっているだろう。穴があったら入りたい気持ちってこの事を言うのだろうか……。
うん、オーケイ。落ち着こうボク。ここは深呼吸だ。深呼吸。深呼吸。
「すー……はぁー」
「あの……先輩?」
「ああ、大丈夫だよ」
少し落ち着いたボクはそう言って、心配した面持ちの彼女に苦笑を含めた笑みを浮かべた。
すると彼女は、赤くなった顔を更に赤くさせて、顔を俯かせながらもじもじとしはじめる。
――か、可愛い。
ボクは彼女の様子に思わず、そんなことを思ってしまった。
確かに、彼女は可愛いと言える部類に入るだろう。サラッとした切れ細やかな黒髪を腰まで伸ばして、
デル並みのスレンダーな体系。目鼻立ちも整っており、パッチリと開いた目なんかは人懐っこさを感じさせる。
容姿に比例するように、学年で上位に入る程の学力の持ち主で、人並み以上に運動もできる彼女は、総合的に見て、まさに「美少女」と呼ぶに恥じのない女性だろう。
性格のほうも悪い噂を聞かないし、むしろいい噂しか聞かない。
当然数多くの男性に告白されているだろうし、実際ボクも彼女が告白されている場面を偶然見たことがある。
彼女のことだから男性と付き合えば、そういった噂が嫌だといっても耳に入るだろうし、そんな話題がでていないということは、すべての交際の申し出を断ってきたのかもしれない。
そんな、美少女プラス撃墜王の称号を得た彼女にボクは告白されているわけで……。
ボクは自慢ではないが、学力・運動・容姿的に見ても一歩飛び出るような要素を持ち合わしていないし、他の人からボクを見れば、「平凡・ありきたり」といった言葉で言い表されてしまうだろう。
そんなボクに告白をする女性、ましてや彼女「桜坂 黎 さくらざか れい」に対してボクの頭の中は困惑と動揺に満たされていた。
確かに、彼女とは一応知り合いという部類に入る。ボクはこの2年間陸上部に所属していて、彼女はそこのマネージャーなのである。といっても、生徒会にも入っている彼女は、あまり部活に顔を見せないのだけれど……。
そんな、人付き合いが苦手なボクとあまり部活に顔をださない彼女とでは、当然話したことなんてほとんどなく、あったとしても、せいぜい「おはよう」「お疲れ様」といったような挨拶ぐらいなものだった。
ボクは彼女から告白されるような要因が全くわからず、動揺の色を顔に浮かべながら、震える声で彼女に声をかけた。