ある日の告白-2
「あの……こんなことを聞くのはなんだけど、その、ボクのどこを好きになったのかな?」
「それは、その、入学当初に、たまたまなんですけど。誰もいないグラウンドで、一人自主トレーニングをしている先輩を見て……その、男らしくて、かっこいいなって……」
「そ、そうなんだ。お、男らしい、か……」
確かにごくたまにだが部活が終わった後、一人残って練習したことがあるけど、まさかそれを見て男らしいと思うとは……。
「それで、先輩。返事の方は……」
目をウルウルとさせて、やや上目使いで彼女はボクを見つめる。
「えっと、えと…その」
や、やばい。彼女の眼は強力すぎるっ。自分の意思とは反してOKを出してしまいそうだ。
ボクはその衝動に焦りを感じ、一度自分を落ち着かせ、ゆっくりと、そしてハッキリと彼女に答えを返した。
「ご、ごめんっ。……君とは、付き合えない」
そのボクの言葉に、桜坂黎の眼は大きく見開かれる。
「ど……どうして、ですか? 私の、なにがいけないんでしょうか? もしかして、先輩。もう付き合ってる人がいるんじゃ……」
「い、いやいや! そんな人いないって、ほんとに!」
うう。なんか凄い罪悪感を感じる……。だけど、ボクが彼女の告白を断る理由、断固たる理由があるわけで……。
ボクは大きく息を吸って、ゆっくりと吐く。その深呼吸を数回繰り返して、そして決意を込めた眼を彼女に向けた。
「だって……ボクと桜坂さんは……その、同姓じゃないか」
そう言って、女子陸上部員のボク【赤守 優】は、「えっ?」と困惑した様子の彼女に微笑みかけたのだった。
【終】