ICHIZU…A-5
「アンタって、分かり易い性格ね」
「違う!オマエが汗臭いって言ったからだ」
「これで有理ちゃんも、少しは見る目が変わるかもね」
2人は校門を出た。直也が、“じゃあ、また明日”と言った。佳代も返そうとした時、尚美の顔が浮かんだ。
「そう言えばキャプテンさ、誰か付き合ってる娘いるの?」
「さあ〜、いないんじゃないか……!まさかオマエ…」
「まさか何?」
「兄貴と付き合いたいのか?」
佳代は右手を大きく振りながら、
「違う、違う!…私じゃないよ…知り合いが言ってたから…」
「だろうな…オマエみたいな真っ黒けな女子、兄貴の好みじゃないもの」
「悪かったね!真っ黒で。ちなみに好みって?」
「結構オバサン趣味だぞ。仲間由紀〇だってっから」
佳代は天を仰ぎながら、
(あぁ、尚ちゃん…先は長いよ)
そう思った。
「じゃあ、また明日」
直也は佳代の言葉に、
「明日はちゃんと来るんだぞ」
と、右手を軽くあげた。
(まったく……可愛い気のない奴)
と思いながら直也と逆の方向へと自転車を走らせた。
空は群青から漆黒へと色を変え、星が瞬いていた……
…【ICHIZU…A 完】…