ふたりのみらい-1
「きっといつかまた会えるよね?」
彼女は瞳に涙を浮かべ、消え入りそうな小さな声で僕にそう尋ねた。
「当たり前だろ、僕達はやっと始まったばかりなんだら」
「これから恋人らしいこと、いっぱいするんだろ?」 僕の瞳にも涙が浮かび頬をつたい落ちていたが、できるかぎり強がって彼女に語りかけた。
「うん、そうだよね」
彼女は瞳の横に何本もの涙の跡を作りながらそう答えた。
「ねぇ、してみようか・・・」
「えっ、なにを?」
少し驚いたように彼女が答えた。
「キス」
もう恥ずかしさなんか無かった、とにかく彼女のことが少しでも知りたかったから、これからふたりが経験していくはずだったことを彼女にも知ってほしかったから。
「・・・ウン」
彼女は僕から目をそらし、聞き取れないほど小さい声で頷いた。
僕は彼女の瞳を真っすぐ見つめた。そっと右手の指で彼女の涙の跡に触れると、彼女はゆっくり瞳を閉じた。右手を添えたまま彼女の唇に僕の唇を重ねた。その感触を確かめるように、何度か唇を重ねた。僕の指が彼女の涙で濡れていくのがわかった。その涙を止めたくて、そして、彼女といられる残りわずかな時間を止めたくて何度も唇を重ねた。
「ありがとう」
彼女は僕にそうに告げて、空へ帰っていった。
「きっとまたいつか会えるよね?」
彼女の言葉が僕の胸に残っている。
「会えるさ、きっと。」
僕はそう信じている。