アキのうた-1
「こんばんわ」
こんばんわ?
何であんたがこんなところにいる?
「ここからの夜景ってサイコーだよね」
ああ、最高だ。
だがあんたがいるせいで最悪だ。
だから出て行ってくれ。
この屋上から。
「自分ん家からこんな綺麗な景色が見れるなんて知らなかったな」
自分ん家?
あんたもこのマンションに住んでるのか。
「…………」
喋らないのか?
もう話しは終わりか?
終わりなら、さっさとどっか行ってくれ。
あんたがいると……
「君さ、あたしの演奏、毎日聞きに来てくれるよね?」
演奏?
ああ、バーでやってるやつか。
毎日聞きに行ってるよ。
悪いのか?
「嬉しいよね〜」
何が。
「毎日聞きに来てくれるの君だけだもん」
………。
「ピアノの前に座ってね、お客さんたちを見回すといつも君がいるんだよね」
その話しはいい。
やめてくれ。
「一番奥のカウンター、ぜったいあそこだよね」
ああ、あそこが好きだからな。
一番落ち着くからな。
「ねえ」
まだ続くのか?
「どうしていつもあの場所なの?」
どうでもいいだろ。
その理由を俺があんたに話して何になる?
たいした理由じゃないことぐらいわかるだろ。
「………あそこが一番落ち着くんだ」
「アハハ〜、やっぱり?わかるよ、あたしもそうだもん」
………。
「なんか落ち着くよね」
………。