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初体験
【エッセイ/詩 その他小説】

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初体験-1

初めて出会ったのは、初めて行ったライブハウス。
地下になっているそこは、狭い入口を入ると左はすぐ楽屋で、目の前には狭い階段が迫ってる。
ホントに狭いとしか言いようのない場所。
でも、真面目しか取り柄のないあたしには大冒険。

いつもより気合いをいれたかっこで、友達の後ろに隠れながら扉を開けた。

ビックリした。。

ステージが近かったこと、
人の密度、
ファンの熱気、
目がチカチカするライト、
音が割れた爆音、
その中のすべて、
あたしの初体験のすべてに。


30分ことにチェンジするステージ。
4組の演奏はあっと言う間に終わった。
その日の時間の流れは速かった、たぶん短いあたしの人生で一番。


目当てのバンドは友達の彼氏のやつ。
いよいよ次。

音出しが始まった。
向かって右がギター、
真ん中がドラム、
左がベース。
そのバンドメンバーの友達であろうストリート系のかっこした団体が、ステージ前を乗っ取っていった。
ステージではメンバーは黙々とチューニングを始める。

その姿を、あたしはセクシーだと思った。
ストイックで、
アグレッシブで、
乱暴で、
でも繊細で。


突然、
一人の人から視線が離せなくなった。
なんか、惹かれた、
ベースの様子を調べる人に。。

黒ぶち眼鏡をかけたその人の前には、たくさんの友達。
ふざけて野次を飛ばしてた。
それにちょっと拗ねたような、気にしないような顔をして弦をつまびく。
初めて男の人をかわいいと思った。
数メートルの距離を、なぜか遠く遠く感じた。
あたしとは別世界。
目の前で起こってる、日常なのに、ドラマのワンシーンを見て、主人公をちょっと本気でイイナって思ってるような、そんな感じがした。。



ベース音が身体に響く。
一旦引っ込んだ、彼らの入場音が流れだす。
会場は色めく。
あたしは取り残される。

ベースの彼はいなかった。
ステージには4人のメンバーは揃ってた。
ベースの彼のいた場所には、眼鏡をかけてない人が立った。
まるで最初から彼なんかいなかったみたいに。

あたしの隣に立っている友達は、
恥ずかしそうに
嬉しそうに、
そしてなんとなく誇らしそうに、
ドラムを叩く彼氏を見つめてた。
その目がとても純粋にキラキラしていて、
幸せそうで、
あたしはなぜかちょっとだけ、嫉妬した。。


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